今回は、ちょっと具体的なご相談の内容を紹介したいと思います。
税務上の取り扱いがややこしい、細かい部分ですが、実際に直面する機会はゼロではありません。
同じようなお悩みをお持ちの皆さんの一助になればと思います。

【相談内容】

当社(株式会社)は、熊本市に本店を構えています。

このたび、隣接する益城町に、従業員Aが住むための社宅を借りることになりました。

この場合、当社は益城町にも法人市民税(均等割)の納税義務があるのでしょうか?

なお、益城町には、この社宅以外に当社の支店や営業所などは一切ありません。

【結論】

今回のケースでは、貴社には益城町に対する法人市民税(均等割)の納税義務が発生しないと考えられます。

その理由について、以下で説明します。

法人市民税が課税されるケース

市区町村は、次のような条件に該当する法人や個人に対して法人市民税を課すと地方税法で定めています。

  • その市町村に事務所や事業所がある法人
  • その市町村に「寮や宿泊施設など」がある法人(ただし、事務所等がない場合に限る)

この「寮や宿泊施設など(以下、寮等)」に該当するかどうかがポイントになります。

「寮等」に含まれる施設とは?

総務省の見解によると、「寮等」とは次のような施設を指します。

  • 法人が従業員のために設けた、寮・宿泊所・クラブ・保養所・集会所など
  • 所有しているかどうかに関係なく、法人が用意し、常時使われる施設

ただし、次のような施設は「寮等」には含まれません。

  • 鉄道職員の交代時の宿泊施設のように、実質的に事業所とみなされるもの
  • 独身寮や社員住宅など、特定の従業員の居住のための施設

今回の社宅は「寮等」に該当しない

ご相談の社宅は、特定の従業員のための住まいであり、事務所や営業活動の拠点ではありません。

また、益城町内には他に支店や事務所なども存在しません。

以上をふまえると、この社宅は「寮等」には当たらないと判断されるため、益城町への法人市民税(均等割)の納税義務は生じないと考えられます。

【ちょっと補足:住民税の特別徴収は忘れずに…】

益城町に社宅があっても、今回のケースなら法人市民税は不要ですが、そこに住む従業員の住民税は別です。

特別徴収として会社が給与から天引きして納める必要があるので、うっかり忘れないように気を付けておきましょう。

【参考法令等】

地方税法第294条

総務省「地方税法の施行に関する取扱いについて(市町村税関係)」

投稿者プロフィール

木下博昭税理士事務所
木下博昭税理士事務所税理士/南九州税理士会 139642
熊本生まれ 熊本育ち
税理士の木下博昭です。税理士業界歴21年!
節税や補助金、創業融資などを利用して、会社にお金を残す!
これに特化した経営支援を行いたいと思い独立を決意。
令和元年、令和のスタートともに独立しました。
もちろん、税制を活用した節税も行います。
農業コンサルタント向けに税制改正や節税の講演も実施しています。
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