
こんにちは、木下博昭税理士事務所です。
今回、こんなご相談を頂きました。
75歳男性(熊本市在住)のご相談
私は現在75歳になります。
数年前、まだもう少し気力も体力もあった頃に、試しにビットコインを購入しました。
当時はそれほど深く考えずに保有していたのですが、気がつけば思いのほか価値が上がっていて、今ではなかなかの金額になっています。
しかし、最近になって、自分でも少し判断力の衰えを感じるようになりました。
そうなると、今後このビットコインをどうすべきかが気にかかります。
売却して他の資産に換えておいた方がよいのか、それともこのまま保有を続けて、いずれ相続という形で子どもに引き継いでもらった方がよいのか——。
もし私が亡くなった場合、このビットコインは子どもにとって相続税の課税対象になるのでしょうか。
仮想通貨の扱いはまだまだよくわからない部分が多く、どのように評価されるのかも含めて、教えていただけたらと思っております。
※相談者様の許可を得て、個人情報は変更した上で、掲載させて頂いております。
仮想通貨は相続税の対象
1.暗号資産を相続により取得した場合
相続税法では、被相続人(※亡くなった方)から「金銭に見積もることができる経済的価値のある財産」を取得した場合、それは相続税の課税対象となります。
ここでいう「金銭に見積もることができる経済的価値のある財産」とは、不動産や預貯金、株式のように、金額として価値が評価できるすべての財産を意味します。
一方、暗号資産(※ビットコインなどの仮想通貨)は、「資金決済に関する法律(決済法)」において、「不特定の者に対して代価の弁済のために使用することができる財産的価値」と定義されています。これは言い換えると、一般的に通貨のように使える価値のあるもの、という意味です。
したがって、暗号資産は相続税法上においても「経済的価値のある財産」に該当するため、相続によって取得した場合には相続税が課税される対象となるのです。
2.相続により取得した暗号資産の評価方法
暗号資産を相続によって取得した場合、その価額(※評価額)をどのように算定するかについては、原則として「財産評価基本通達(評価通達)」に基づいて行います。
しかし、現時点ではこの評価通達において、暗号資産についての具体的な評価方法は明記されていません(※令和6年4月現在)。
そのため、暗号資産の評価については、評価通達の基本的な考え方に「準じて(※同様のルールを参考にして…という意味です)」、次のような状況に応じて評価を行うのが実務上の扱いとなっています。
活発な市場が存在する場合
「活発な市場が存在する」とは、特定の暗号資産について、暗号資産交換業者や販売所において十分な取引量と取引頻度があり、継続的に価格情報が提供されている状況を指します(※このような市場では、相場といえる一定の価格が成立していると考えられます)。
このような場合には、暗号資産は客観的な交換価値(※市場で取引されている価格)があると認められますので、評価にあたっては外国通貨の評価方法に準じて取り扱われます。
具体的には、次のいずれかの方法により評価を行うことが認められています。
- 課税時期(※被相続人の死亡日)における取引価格を用いる方法
⇒ 相続人が実際に利用している暗号資産交換業者が公表している価格をもとに評価します。たとえば、交換業者から発行される残高証明書に記載された価格がこれに該当します。 - 暗号資産交換業者が公表する売却価格を用いる方法
⇒ 購入価格(買値)と売却価格(売値)の両方が提示されている場合には、納税義務者(※相続人など税金を支払う立場の人)がその暗号資産を売却する価格(売却価格)を基準として評価することが可能です。 - 複数の交換業者で取引している場合の取扱い
⇒ 納税義務者が複数の交換業者を利用しているときは、その中から任意に選んだ1社の課税時期における取引価格を評価の基準として用いることができます。
このように、活発な市場がある暗号資産については、市場での取引価格をベースに評価することで、比較的明確な金額をもって相続税申告が可能となります。
活発な市場が存在しない場合
「活発な市場が存在しない」とは、暗号資産について継続的な価格情報が提供されておらず、十分な取引量や取引頻度も確認できない状態を指します。つまり、客観的な交換価値(※相場価格)が明確に把握できない状況です。
このようなケースでは、相場に基づいた一律の評価が難しいため、その暗号資産の内容・性質・取引実態等を総合的に考慮して、個別に評価を行うことになります。
具体的な評価方法としては、次のようなものがあります:
- 売買実例価額(ばいばいじつれいかがく)
⇒ 同種・同条件の暗号資産が、過去に実際に売買された価格を参考にする方法です。 - 精通者意見価格(せいつうしゃいけんかかく)
⇒ 暗号資産の価値に詳しい専門家(暗号資産に精通した第三者)の意見を基にした評価です。
これらの手法を「参酌(さんしゃく)」(※状況を踏まえて参考にすること)して、評価額を定めていくことになります。
また、注意しておきたいのが、暗号資産の中には取得時期によって大きく値上がりしているものもあるという点です。仮にご存命のうちにこれを売却した場合、その利益には所得税が課されることになります。
個人が暗号資産を売却した際の所得は、原則として総合課税(そうごうかぜい)となり、雑所得または事業所得として扱われます。これは、株式や投資信託などの申告分離課税(しんこくぶんりかぜい)が適用される金融資産と比べて、税率が高くなる可能性があるという特徴があります。
したがって、暗号資産を生前に売却して他の安定した資産に組み替えるか、あるいはそのまま相続させるかは、他の財産・債務の状況や、将来の相続人の生活・税負担の見通しなどを含めて、総合的に検討することが重要です。
相続や資産の組み替えについてお悩みの方は、ぜひ一度、当事務所までご相談ください。専門的な視点から、最適な選択肢をご提案させていただきます。
まとめ
近年、ビットコインをはじめとした暗号資産は高齢の方の保有も珍しくなくなり、相続財産としての取り扱いが現実的な問題となっています。暗号資産はその特性上、評価方法や課税関係が一般的な金融資産と異なる点が多く、誤った理解のまま対応すると、思わぬ税負担や手続き上の混乱を招くことにもなりかねません。
特に、活発な市場が存在するか否かによって評価方法が大きく異なる点や、売却した場合の所得税負担も含めて考える必要があるため、相続か生前処分かの判断は慎重な検討が求められます。
ご自身やご家族の今後のライフプランに応じて、暗号資産をどのように扱うかを早めに整理しておくことが、安心した老後、円滑な相続につながります。
暗号資産に関する相続対策や、生前贈与・資産の組み替えをご検討の方は、どうぞお気軽にご相談ください。
木下博昭税理士事務所では、暗号資産を含む新しい資産にも対応した相続税や所得税のご相談を承っております。
「このままで大丈夫かな?」と少しでもご不安がある方は、お気軽にお問い合わせください。
ご家族にとって最善の選択ができるよう、誠実にサポートいたします。
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