
個人事業主が、配偶者や親などの家族に無給で仕事を手伝ってもらうことはあります。家族だけで事業をしている場合など、無給で手伝ってもらえるケースもあります。
ただし、「家族だから無給でよい」と一律にはいえません。同居しているか、ほかに従業員がいるか、どのくらい仕事をしているかによって扱いが変わるためです。
税金についても、青色申告か白色申告かによって、家族への給与や扶養の扱いが異なります。まずは、次の3点を確認しましょう。
- 家族と同居しているか
- 家族以外の従業員を雇っているか
- 青色申告と白色申告のどちらか
そのうえで、無給のまま手伝ってもらうのか給与を支払うのかを考えることが大切です。
家族の無給の手伝いについてよくある質問
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無給で手伝う家族にも確定申告は必要ですか?
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無給で手伝っていることだけで、その家族に確定申告が必要になるわけではありません。
ただし、家族に給与以外の所得がある場合などは、別に確定申告が必要になることがあります。また、白色申告で「事業専従者控除」を使う場合は注意が必要です。事業専従者控除とは、家族が事業を中心に手伝っている場合に、一定額を必要経費として差し引ける制度です。
この制度を使うと、実際に現金を渡していなくても、控除した金額は家族側では給与収入があったものとして扱われます。そのため、「無給だから家族側には何も関係ない」と考えるのはやめましょう。
参考:国税庁「白色事業専従者が他に給与所得を有する場合」
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会社員の家族が無給で手伝う場合も副業になりますか?
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無給であっても、「勤務先への届出は必要ない」とは限りません。
会社員の家族に手伝ってもらう場合は、まず勤務先の就業規則を確認しましょう。会社によって、副業・兼業のルールや届出の条件が異なります。たとえば、
- どのような仕事をするのか
- 週に何日・何時間くらい手伝うのか
- 本業に影響しないか
を整理したうえで、必要であれば勤務先へ確認しましょう。
- 1. 家族の無給の手伝いについてよくある質問
- 2. 個人事業主が家族に無給で手伝いを頼むときの基本ルール
- 2.1. 一緒に暮らす家族には無給で手伝ってもらえる場合がある
- 2.2. 別居の家族やほかの従業員と同じように働く家族は確認が必要
- 3. 無給で手伝う家族の税金と扶養の扱い
- 3.1. 青色申告では無給の手伝いを給与として経費にできない
- 3.2. 白色申告では無給でも「事業専従者控除」を受けられる場合がある
- 3.3. 配偶者控除・扶養控除を使えるかは給与の有無と働き方で変わる
- 3.4. 税金の扶養と健康保険の扶養はルールが違う
- 4. 家族に給与を払い始めるときの注意点
- 4.1. 青色申告で家族への給与を経費にする条件と届出の期限を確認する
- 4.2. 生活費と給与を分ける
- 4.3. 自分の税金だけでなく家族全体で手元に残るお金を比べる
- 5. 無給の手伝いを続ける前に家族で決めておきたいこと
- 6. まとめ
個人事業主が家族に無給で手伝いを頼むときの基本ルール
まず確認したいのは、家族が「家族として手伝っている」のか、「従業員として働いている」のかという点です。
特に、
- 同居しているか
- 家族以外の従業員がいるか
- ほかの従業員と同じように働いているか
によって、労働基準法などの扱いが変わることがあります。
一緒に暮らす家族には無給で手伝ってもらえる場合がある
同居している家族だけで事業をしている場合、労働基準法は原則として適用されません。そのため、夫婦や親子などで事業を行い、家族の協力として無給で手伝ってもらうことはあります。
ただし、「同居している家族なら、どのような働き方でも無給でよい」という意味ではありません。
家族の給料を経費にしたい場合など、事業の状況が変わったときは、家族の働き方もあらためて確認しましょう。
参考:厚生労働省「労基法は、働く人みんなに適用されるのですか。」
別居の家族やほかの従業員と同じように働く家族は確認が必要
別居している家族は、「同居の親族だけで事業をしている場合」の扱いとは異なります。また、家族以外の従業員を雇っていて、家族も同じように働いている場合は、その家族が労働者に当たることがあります。
たとえば、
- 事業主から仕事の指示を受けている
- 出勤時間や勤務時間が決められている
- ほかの従業員と同じ仕事をしている
といった場合です。
労働者として雇うのであれば、最低賃金などのルールも確認する必要があります。判断が難しい場合は、労働基準監督署や社会保険労務士などの専門家へ確認しましょう。
参考:厚生労働省「使用者と最低賃金制度」
無給で手伝う家族の税金と扶養の扱い
次に確認するのが、税金と扶養です。税金では「同居しているか」だけでなく、「生計を一にしているか」が重要になります。
「生計を一にする」とは、簡単にいえば、生活費を一緒に負担して生活している状態です。必ずしも同居が必要なわけではありません。別居していても、継続して生活費を送っている場合などは、生計を一にしていると判断されることがあります。
家族が事業を中心に手伝う場合には「事業専従者」に当たることもあります。青色申告と白色申告の主な違いは、次のとおりです。
| 申告方法と家族の状況 | 事業主側 | 配偶者控除・扶養控除 |
|---|---|---|
| 青色申告で無給 | 家族の給与は経費にならない | ほかの要件を満たせば対象となる場合がある |
| 青色事業専従者として給与を払う | 条件を満たす給与を経費にできる | 対象外 |
| 白色申告の事業専従者 | 条件を満たせば事業専従者控除を使える | 対象外 |
| 白色申告で事業専従者に当たらない | 事業専従者控除は使えない | ほかの要件を満たせば対象となる場合がある |
まずは、自分が青色申告か白色申告かを確認し、そのうえで家族が事業専従者に当たるかを確認しましょう。
青色申告では無給の手伝いを給与として経費にできない
青色申告だからといって、家族が無給で働いた分を自動的に経費にできるわけではありません。たとえば、家族が100時間手伝ったとしても、「時給1,000円として10万円を給与にしたことにする」といった処理はできません。
家族への給与を経費にしたい場合は、青色事業専従者給与の条件を満たし、実際に給与を支払う必要があります。無給で手伝ってもらう場合と、給与を支払って経費にする場合は分けて考えましょう。
白色申告では無給でも「事業専従者控除」を受けられる場合がある
白色申告の場合は、実際に給与を払っていなくても、一定の条件を満たせば「事業専従者控除」を使える場合があります。主な条件は次のとおりです。
- 事業主と生計を一にする家族である
- 12月31日現在で15歳以上である
- 原則として、その年に6か月を超えて事業を中心に手伝っている
- 確定申告書に必要事項を記載する
控除できる金額は、次のうち低い方です。
- 配偶者は最高86万円、その他の親族は1人につき最高50万円
- 事業専従者控除を引く前の事業所得など÷(事業専従者の人数+1)
たとえば、配偶者だから必ず86万円を経費にできるわけではありません。事業の所得によっては、それより少なくなることがあります。
また、白色申告の事業専従者になった家族は、配偶者控除や扶養控除の対象にはなりません。
参考:国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」
配偶者控除・扶養控除を使えるかは給与の有無と働き方で変わる
家族が手伝っているからといって、すぐに配偶者控除や扶養控除が使えなくなるわけではありません。たとえば、青色事業専従者として届出をしていても、その年に一度も給与を受け取っていなければ、ほかの条件を満たすことで配偶者控除や扶養控除の対象になる場合があります。
一方、白色申告の事業専従者は、実際に給与を受け取っていなくても、配偶者控除や扶養控除の対象にはなりません。確認するときは、
- 青色申告か白色申告か
- 家族に給与を支払っているか
- 事業専従者に当たるか
- 家族本人にほかの所得があるか
を整理すると分かりやすくなります。
配偶者の扶養について詳しく知りたい方は、次の記事も参考にしてください。
参考:国税庁「No.1191 配偶者控除」
参考:国税庁「No.1180 扶養控除」
税金の扶養と健康保険の扶養はルールが違う
「扶養」という言葉には、税金の扶養と健康保険の扶養があります。この2つは別の制度です。
税金で配偶者控除や扶養控除を使えるからといって、健康保険でも必ず扶養に入れるわけではありません。反対に、税金の扶養から外れたからといって、健康保険の扶養から必ず外れるとも限りません。
家族が会社員などの健康保険に入っている場合は、収入や生計を維持している人などの条件を加入先へ確認しましょう。
参考:日本年金機構「従業員が家族を被扶養者にするときの手続き」
家族に給与を払い始めるときの注意点
無給だった家族へ給与を支払い始める場合は、いきなり振り込みを始めるのではなく、先に税務上の条件を確認しましょう。特に青色申告では、家族への給与を経費にするための届出があります。
青色申告で家族への給与を経費にする条件と届出の期限を確認する
青色事業専従者給与を経費にするには、主に次の条件があります。
- 事業主と生計を一にする家族である
- 12月31日現在で15歳以上である
- 原則として、一定期間を超えてその事業を中心に働いている
- 税務署へ届出をしている
- 届出の範囲内で実際に給与を支払っている
- 仕事内容に対して給与額が高すぎない
会社員として働いている家族や学生の場合は、「事業を中心に働いている」といえるかを特に確認する必要があります。
届出期限は原則として、その年の3月15日までです。ただし、1月16日以後に開業した場合や、新しく家族が事業専従者になった場合は、開業日または専従者になった日から2か月以内となります。
「今月から給与を払うので、いつでも2か月以内に出せばよい」というルールではないため注意しましょう。
参考:国税庁「青色事業専従者給与に関する届出手続」
生活費と給与を分ける
家族に給与を支払う場合は、「家族に渡す生活費」と「仕事に対する給与」を分けて管理しましょう。少なくとも、次の内容を残しておくと整理しやすくなります。
- どのような仕事をしたか
- いつ仕事をしたか
- 給与はいくらか
- いつ支払ったか
銀行振込にしておけば、給与を支払った記録も残しやすくなります。
これまで生活費として渡していたお金を、年末になってからまとめて「給与だったことにする」といった処理は避けましょう。
給与を支払う場合は、源泉徴収や年末調整が必要になることもあります。給与を始める前に、必要な手続きまで確認しておくことが大切です。
自分の税金だけでなく家族全体で手元に残るお金を比べる
家族へ給与を支払えば、その分だけ事業主の所得を減らせる場合があります。しかし、「給与を払えば必ず得になる」とは限りません。
給与を受け取る家族側では、
- 所得税や住民税
- 配偶者控除や扶養控除
- 健康保険の扶養
- その他の社会保険料
などに影響する場合があるためです。
給与を始める前に、「事業主の税金がいくら減るか」だけでなく、「家族全体で手元にいくら残るか」を比べましょう。自分で計算するのが難しい場合は、給与を支払い始める前に税理士へ相談すると整理しやすくなります。
無給の手伝いを続ける前に家族で決めておきたいこと
無給で手伝ってもらう場合でも、「家族だからお願いする」で終わらせず、仕事の範囲を決めておきましょう。少なくとも、次の点を家族で確認しておくと安心です。
- どの仕事を任せるのか
- 週に何日・何時間くらい手伝うのか
- いつまで無給で手伝うのか
- 家族本人が無理なく続けられるか
- どの段階で給与を支払うか
- 生活費と事業のお金をどう分けるか
特に、最初は月に数時間だった手伝いが、いつの間にか毎日の仕事になっている場合は、働き方を見直すタイミングです。仕事の量が増えたら、無給のまま続けるのか、給与を支払うのかをもう一度話し合いましょう。
夫婦で事業をする場合の役割分担については、次の記事も参考にしてください。
まとめ
個人事業主の家族は、条件によっては無給で事業を手伝うことができます。ただし、「家族なら無給で問題ない」と一律には判断できません。
まず、
- 同居しているか
- 家族以外の従業員がいるか
- 青色申告か白色申告か
- 家族がどのくらい事業を手伝っているか
を確認しましょう。
そのうえで、無給を続けるのか、給与を支払うのかを考えます。
給与を支払う場合は、税務署への届出や実際の支払い、仕事内容の記録まで必要になることがあります。労務上の扱いが分からない場合は労働基準監督署や社会保険労務士へ、税金や家族への給与について迷う場合は税理士へ相談しましょう。
木下博昭税理士事務所では、家族の仕事内容や現在のお金の流れを確認したうえで、無給を続ける場合と給与を支払う場合の違いについても相談できます。
「家族に給与を払ったほうがよいのか」「扶養への影響まで含めて確認したい」という方は、ご相談ください。
投稿者プロフィール

- 税理士/南九州税理士会 139642
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熊本生まれ 熊本育ち
税理士の木下博昭です。税理士業界歴21年!
節税や補助金、創業融資などを利用して、会社にお金を残す!
これに特化した経営支援を行いたいと思い独立を決意。
令和元年、令和のスタートともに独立しました。
もちろん、税制を活用した節税も行います。
農業コンサルタント向けに税制改正や節税の講演も実施しています。
何かご相談があればお気軽にどうぞ!
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