
夫が個人事業主で妻が外で働いている、または夫の事業を手伝っている場合、配偶者控除の対象になるか迷うことがありますよね。配偶者控除の対象になるかは、夫の個人事業から妻へ給与を支払っているか、その妻が事業専従者に当たるかどうかが重要です。
配偶者が個人事業主である夫から専従者給与を受け取っているなどであれば、配偶者控除の対象にはなりません。一方、パートなどで働いている場合は給与収入が136万円以下であれば、配偶者控除の対象になる可能性があります。
この記事では、個人事業主の妻と配偶者控除の関係について解説します。
個人事業主の妻と配偶者控除についてよくある質問
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夫が個人事業主でも配偶者控除の対象にできますか?
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できます。
民法上の配偶者で生計を一にし、妻と夫の所得要件を満たし、妻が事業専従者等でなければ対象になる可能性があります。具体的な要件については、後述します。
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妻自身が個人事業主でも配偶者控除の対象になりますか?
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対象になる可能性はあります。
売上ではなく必要経費を引いた事業所得を含む合計所得金額で判定することが重要です。事業所得だけでなく、給与など他の所得があれば合算します。計算の考え方は後述します。
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法人成りすれば給与と配偶者控除を活用できますか?
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両立できる可能性はありますが、法人成りすれば必ず配偶者控除を必ず適用できるわけではありません。
妻の給与だけでなく、夫の所得も影響します。また、法人成りすることで、社会保険や均等割などの負担が増える可能性があるため、法人成り前にシミュレーションすることが大切です。
- 1. 個人事業主の妻と配偶者控除についてよくある質問
- 2. 妻に給与を支払う場合は配偶者控除等と併用できるか確認する
- 2.1. 青色・白色の事業専従者は配偶者控除等を使えない
- 2.2. 少し手伝うだけで配偶者控除を使えなくなるわけではない
- 2.3. 給与を経費にするには勤務実態・期間・届出・給与額などの条件がある
- 3. 個人事業主でも妻を配偶者控除の対象にできる
- 3.1. 配偶者控除にするための要件を満たす必要がある
- 3.2. 合計所得金額は収入ではなく所得で判定する
- 3.2.1. 2025年分と2026年分の配偶者控除の所得基準
- 3.3. 個人事業主本人の合計所得金額が1,000万円以下である
- 4. 配偶者控除の基準を超えても配偶者特別控除の可能性がある
- 5. 配偶者控除等と妻への給与は夫婦に残るお金で比較する
- 5.1. 税金の配偶者控除と社会保険の扶養は別制度として考える
- 6. 妻への給与と配偶者控除等の両立を考えるなら法人成りも選択肢になる
- 6.1. 法人から支払う給与は青色事業専従者給与ではない
- 6.2. 役員にする場合は役員給与のルールを確認する
- 6.3. 社会保険料や法人維持費まで含めて法人成りを判断する
- 7. 個人事業主が妻の配偶者控除等を適用する前に確認するチェックリスト
- 8. まとめ
妻に給与を支払う場合は配偶者控除等と併用できるか確認する
妻に給与を支払っていても、給与の種類と妻の働き方によって配偶者控除等を使えるかは変わります。まず、妻が事業専従者に当たるかを確認しましょう。
青色・白色の事業専従者は配偶者控除等を使えない
夫の個人事業で青色事業専従者として給与を受け取った、または白色申告で事業専従者となった年は、妻は配偶者控除等の対象になりません。
青色事業専従者給与とは、青色申告をしている事業主が、生計を一にする家族へ一定の要件のもとで支払う給与です。白色申告では給与そのものを必要経費にするのではなく、要件を満たす場合に事業専従者控除を受けます。
どちらを検討する場合も、配偶者控除等とは併用できないため注意が必要です。
参考:国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」
少し手伝うだけで配偶者控除を使えなくなるわけではない
妻が夫の事業を少し手伝うだけで、直ちに事業専従者となり配偶者控除等を使えなくなるわけではありません。一方で、実際の働き方や従事した期間、事業への関わり方によっては、事業専従者に当たるかを確認する必要があります。
妻の日々の業務内容と勤務の記録を整理しておくと、後で判断しやすくなります。
給与を経費にするには勤務実態・期間・届出・給与額などの条件がある
妻への給与を青色事業専従者給与として必要経費にするには、以下などの要件を満たす必要があります。
- 実際に働いていること
- 原則としてその年を通じて6か月を超える期間にわたり専ら事業に従事すること
- 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書を提出していること
- 実際に支払っていること
- 仕事の内容に見合う給与額であること
生計を一にする家族への給与は、原則として必要経費になりません。青色事業専従者給与や白色申告の事業専従者控除は例外的な取扱いなので、外部の勤務先から受け取る給与と同じようには考えないことが大切です。
個人事業主でも妻を配偶者控除の対象にできる
夫が個人事業主であることが、配偶者控除を受けられない理由にはなりません。妻の働き方と夫婦それぞれの所得が要件に合うかを確認しましょう。
配偶者控除にするための要件を満たす必要がある
配偶者控除を受けるには、妻が民法上の配偶者で夫と生計を一にしていること、事業専従者等に当たらないこと、妻と夫の合計所得金額が要件を満たすことが必要です。
2026年分は、妻の合計所得金額が62万円以下であること、夫本人の合計所得金額が1,000万円以下であることが主な要件です。夫の合計所得金額が900万円を超える場合は、控除額が段階的に下がります。
合計所得金額は収入ではなく所得で判定する
配偶者控除の判定は、受け取った収入の合計ではなく、収入から必要な控除や経費を差し引いた合計所得金額で行います。
外部勤務先の給与だけなら、給与収入から給与所得控除を差し引いた給与所得で確認します。妻に事業所得や副業があれば、売上から必要経費を差し引いた所得で判定します。パートと自営・副業を両立している場合は、それぞれの所得を合算しましょう。
夫の個人事業から青色事業専従者給与を受け取った場合は、例え所得などの要件を満たしていても、配偶者控除等の対象外です。
2025年分と2026年分の配偶者控除の所得基準
配偶者控除の所得基準は年分で異なることがあります。給与収入の金額だけで判断せず、対象となる年分を確認することが大切です。2025年分と2026年分の主な違いは以下です。
| 年分 | 妻の合計所得金額の基準 | 妻の所得が給与所得だけの場合の給与収入の目安 |
|---|---|---|
| 2025年分 | 58万円以下 | 123万円以下 |
| 2026年分 | 62万円以下 | 136万円以下 |
2026年分の136万円は、妻の所得が給与所得だけである場合の目安です。事業所得や他の所得がある場合は、給与収入だけの金額をそのまま使わず、合計所得金額で確認しましょう。
参考:国税庁「令和8年分 給与所得者の配偶者控除等申告書」
参考:国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
個人事業主本人の合計所得金額が1,000万円以下である
妻の所得が要件内でも、夫本人の合計所得金額が1,000万円を超える年は配偶者控除を受けられません。夫の所得が900万円を超え1,000万円以下の場合、控除額は減っていきます。
売上や利益だけで夫の合計所得金額を判断せず、ほかの所得も含めて確認しましょう。
配偶者控除の基準を超えても配偶者特別控除の可能性がある
妻の合計所得金額が配偶者控除の基準を超えても、配偶者特別控除を受けられる場合があります。
例えば、2026年は、妻の合計所得金額が62万円を超え133万円以下で、夫本人の合計所得金額が1,000万円以下なら、配偶者特別控除を受けられる可能性があります。ただし、控除額は妻と夫それぞれの合計所得金額に応じて変わります。
妻の給与収入が136万円を超える場合は、配偶者特別控除を検討しましょう。ただし、事業者専従者の場合は、配偶者特別控除の対象にはならないため注意が必要です。
参考:国税庁「No.1195 配偶者特別控除」
配偶者控除等と妻への給与は夫婦に残るお金で比較する
配偶者控除と、青色専従者給与は夫婦に残るお金で比較することが大切です。例えば、青色専従者給与は経費になりますが、給与の合計が38万円未満の場合は配偶者控除の方が税金を抑えられる可能性があります。
妻の実際の働き方、事業の利益、夫婦の税金、家庭と事業に残るお金をまとめて比較しましょう。比較するときは、次の順序で進めるとスムーズです。
- 妻がどの程度事業に関わっているか
- 個人事業の利益はいくらか
- 妻への適正な給与額はいくらか
- 夫婦合計の所得税・住民税はいくらになるか
- 家庭と事業に最終的にいくら残るか
| 制度 | 妻の関与・働き方 | 妻への給与・控除の扱い | 配偶者控除等との併用 | 夫婦に残るお金で確認すること |
|---|---|---|---|---|
| 配偶者控除 | 事業専従者等ではない | 青色事業専従者給与を受けない | 可能 | 妻と夫の合計所得金額、夫の税負担 |
| 配偶者特別控除 | 事業専従者等ではない | 妻の合計所得金額が一定範囲内 | 可能 | 夫婦それぞれの所得に応じた控除額と税負担 |
| 青色事業専従者給与 | 妻が夫の事業に専ら従事する | 仕事に見合う給与が必要経費になる | 併用不可 | 事業利益、夫婦の所得税・住民税 |
| 白色申告の事業専従者控除 | 妻が夫の事業の事業専従者に当たる | 要件を満たす場合に控除 | 併用不可 | 事業利益 |
妻の勤務実態に合わない給与や控除を選ばず、年間を通じた利益や生活費、納税資金まで確認して判断しましょう。
夫婦で事業を行う形をさらに比較したい方は、次の記事もご覧ください。
税金の配偶者控除と社会保険の扶養は別制度として考える
税金の配偶者控除と、社会保険の扶養判定は別の制度です。配偶者控除で判定する合計所得や給与収入の目安を、社会保険の基準としてそのまま使うことはできません。
社会保険の被扶養者となれるかは、加入している健康保険や収入などで確認します。税金と社会保険の扶養は別々に判断しましょう。
参考:日本年金機構「従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き」
妻への給与と配偶者控除等の両立を考えるなら法人成りも選択肢になる
妻への給与と配偶者控除等の両立を考える場合、法人成りは選択肢の1つです。ただし、配偶者控除だけを理由に判断しないようにしましょう。
法人から支払う給与は青色事業専従者給与ではない
法人から妻が役員または従業員として受け取る給料は給与所得であり、個人事業主の青色事業専従者給与とは取扱いが異なります。そのため、法人から妻へ給与を支払っても配偶者控除等の対象外になるわけではありません。
要件を満たせば、給与が経費になり配偶者控除を受けることができます。
役員にする場合は役員給与のルールを確認する
役員給与は支払った給与すべてが、会社の経費になるわけではありません。定期同額給与などのルールに当てはまらない役員給与は、原則として税法上の経費にはできず、不相当に高額な部分も損金に算入できません。
役員給与とは、法人が役員へ支払う給与です。仕事内容や報酬額など事前に整理し、定期同額給与の要件を満たすか確認しましょう。
参考:国税庁「No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」
社会保険料や法人維持費まで含めて法人成りを判断する
法人成りを判断するときは、配偶者控除だけでなく、会社と夫婦の社会保険負担、妻の勤務実態や報酬、法人維持費を含めて確認する必要があります。
法人は、原則として健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所です。妻本人が被保険者になるかは、勤務実態や報酬などを踏まえて判断します。個人事業と法人のどちらが夫婦と事業にお金を残せるかは、利益や役員報酬の金額などによって異なります。
個人事業と法人の税金・手取りを比較したい方は、次の記事もご覧ください。
個人事業主が妻の配偶者控除等を適用する前に確認するチェックリスト
配偶者控除等を適用する前に、目的別に確認しましょう。妻への給与・働き方については、以下です。
- 夫の個人事業から妻へ給与を支払っているか
- 妻が夫の事業で担当している業務は何か
- 妻が事業に従事した期間と働き方はどうか
- 青色事業専従者給与の届出と実際の支払いがあるか
- 支払う給与が仕事の内容に見合っているか
- 白色申告の事業専従者に当たるか
夫婦の所得については、次を確認しましょう。
- 妻の給与収入、事業の売上、必要経費、ほかの所得は何か
- 妻の合計所得金額はいくらか
- 確認したい年分はいつか
- 夫本人の合計所得金額はいくらか
- 夫の所得が900万円を超えているか、1,000万円を超えていないか
法人成り・社会保険については、次を確認しましょう。
- 法人成りを検討する理由は妻への給与だけか、事業全体の資金計画も含むか
- 妻を役員にする予定があるか
- 役員給与の支払い方が法人のルールに合うか
- 会社と夫婦の社会保険への影響を確認したか
- 法人維持費を含めて比較するための情報がそろっているか
夫婦の合計所得金額、法人化後の社会保険に迷う場合は、制度を1つだけで決めずに分かる範囲で整理しましょう。
まとめ
夫が個人事業主でも、妻が要件を満たせば配偶者控除や配偶者特別控除の対象になる可能性があります。ただし、青色事業専従者給与を受け取っている、白色申告の事業専従者である場合は、配偶者控除等の対象外です。
妻への給与、配偶者控除等、法人成りは、それぞれを単独で有利・不利を決めるものではありません。実際の働き方、夫婦の所得、事業の利益、社会保険、法人維持費をまとめて確認し、夫婦の生活と事業に残るお金を考えて選びましょう。
妻への給与と配偶者控除等の関係や、法人成り後の役員給与・社会保険を個別の状況に合わせて確認したい方は、気軽にご相談ください。
投稿者プロフィール

- 税理士/南九州税理士会 139642
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熊本生まれ 熊本育ち
税理士の木下博昭です。税理士業界歴21年!
節税や補助金、創業融資などを利用して、会社にお金を残す!
これに特化した経営支援を行いたいと思い独立を決意。
令和元年、令和のスタートともに独立しました。
もちろん、税制を活用した節税も行います。
農業コンサルタント向けに税制改正や節税の講演も実施しています。
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