副業を法人化するタイミング

「せっかく副業で稼いだのに、税金でこんなに持っていかれるの?」税金の納付書を見て、モヤっとした気持ちになったことはありませんか。家族のため、将来のために積み上げてきた収入だからこそ、できるだけ自分や家族の手元に残したいと思うのは自然なことですね。

法人化は節税に効果的と聞いても、会社設立となると簡単には踏み切れないのも現実でしょう。課税所得が800万円を超えたタイミングに法人化と言われますが、具体的にどのくらい節税になるか事前に知りたいものです。設立費用もかかるし、失敗は避けたいですね。

この記事では、副業の利益が増えてきた会社員の方が、法人化するタイミングについて解説します。

この記事で分かること

  • 副業を法人化するタイミング
  • 法人化するメリットと節税効果
  • 法人化が会社にバレるケースと対策

Q. 副業の利益がいくらになったら法人化すべきですか?

A. 目安は「課税所得800万円」または「売上1,000万円」を超えたときです。このラインを超えると、一般的には法人税よりも所得税の税率が高くなります。また、課税売上高が1,000万円を超えると消費税を納める義務が発生します。

Q. 会社に絶対にバレずに法人化することは可能ですか?

A. 可能です。ただし、よくバレるケースは「社会保険の加入」です。ここを対策せずに手続きを進めると、年金事務所からの通知で会社にバレてしまいます。記事内で、このリスクを回避する具体的な方法を解説しますね。

Q. 結局、法人化すると何がお得なのですか?

A. 経費にできる範囲が広がることです。出張手当を非課税で受け取ったり、自宅を社宅扱いにして家賃を経費にしたりできます。結果として、受けるとお金が増えるでしょう。

目次

副業の法人化の7つのタイミング

副業での収入が増えてくると、「いつ法人化したら良いの?」という疑問を持つこともあるでしょう。法人化は早ければ良いわけでも、遅ければ安全というわけでもありません。判断を誤ると、節税どころか負担が増えてしまうケースもあります。

具体的には、以下の7つのタイミングがあります。

  • 課税所得が800万円を超えるとき
  • 売上が1,000万円を超えるとき
  • 収入が安定し継続性が見えたとき
  • 取引先からインボイス登録を求められたとき
  • 将来の事業承継を考えるとき
  • 不動産の購入を考えるとき
  • 家族へ給与を支払いたいとき

上記に当てはまる方は、今が法人化するタイミングと言えます。ここからは、具体的な7つのタイミングについて解説します。

課税所得が800万円を超えるとき

法人化を検討する代表的なタイミングが、課税所得が800万円を超えてきたときです。ここでいう課税所得とは、年収そのものではありません。

課税所得=収入−必要経費−所得控除(基礎控除・配偶者控除・扶養控除・社会保険料控除など)

つまり、同じ年収・副業利益でも、家族構成や扶養の有無によって課税所得は変わります。例えば年収400万円の場合は、以下が副業利益の目安です。

家族構成(扶養の状況)副業の利益の目安
独身または共働き約642万円
夫婦約680万円
共働き+中学生以下の子1名約642万円
共働き+高校生の子1名約680万円

以下は、年収600万円のケースです。

家族構成(扶養の状況)副業の利益の目安
独身または共働き約512万円
夫婦約550万円
共働き+中学生以下の子1名約512万円
共働き+高校生の子1名約550万円

上記は、概算です。所得控除・社会保険料等によって前後します。

思っていたより早く到達しそうと感じた方は、すでに法人化の検討ゾーンに入っています。

売上が1,000万円を超えるとき

2年前の課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の納税義務が発生します。預かっている消費税を納める必要があるため、税金の負担が増えます。また、消費税の計算や申告が必要になり、記帳や手続きの負担が重くなる点も悩みどころです。

法人化すると、原則として最大2年間は消費税の納税義務が免除されます。例えば1年間の消費税の納付が50万円であれば、100万円の納付が免除されるかもしれません。ただし、資本金やインボイス登録などによっては、1期目から消費税を納める義務が発生するため注意しましょう。

参考:国税庁「納税義務の免除

収入が安定し継続性が見えたとき

一時的に収入が伸びただけの状態で法人化してしまうと、収入が落ちたときに手間とコストだけが増えるリスクがあります。

法人には設立時の費用に加え、赤字であっても毎年発生する法人住民税の負担があります。また、個人の確定申告に比べて法人の申告は複雑なため、税理士費用も考えておきましょう。

収入が一定期間安定しており、来年以降も同じ水準の売上が見込めるなど、事業の継続性が見えてきた段階で判断するのが安全です。

取引先からインボイス登録を求められたとき

インボイス制度の影響により、インボイス登録をしていないと取引先とは取引できないケースが増えています。個人事業主としてインボイス登録を行うと、登録情報として本名が公表サイトに掲載される可能性があります。

本名を隠して事業をしている方は、インボイス登録がきっかけでバレるかもしれません。法人化すれば会社名でインボイス登録ができるため、本名が前面に出にくくなります。ただし、役員登記する場合は、本名が公表されるので注意してくださいね。

参考:国税庁「公表サイトではどのような情報が確認できますか。

将来の事業承継を考えるとき

個人の事業を将来、家族や第三者に事業を引き継ぐ場合、名義変更や契約のやり直し、相続に関する手続きなどが発生し、想像以上に手間がかかります。

一方、法人であれば株式を譲渡することで、会社の経営権をスムーズに移行できます。会社が持っている不動産の名義変更も必要ありません。

「今すぐではないが、いつかは事業を引き継ぐことも考えている」という方であれば、早めに法人化を検討しましょう。

不動産の購入を考えるとき

不動産を個人で所有していると、将来の相続時にさまざまな問題が起こりやすくなります。

相続人同士で分割しにくかったり、評価額をめぐって意見が対立したり、名義変更や税務に関する手続きが煩雑になったりするケースも少なくありません。

一方、法人で不動産を保有していれば、引き継ぐだけで済むため、手続きを比較的シンプルに進めることができます。資産形成として不動産を考えている人ほど、法人化は節税だけでなく、将来を見据えた相続対策としても意味を持つ選択肢と言えるでしょう。

家族へ給与を支払いたいとき

個人事業主が家族に給与を支払う場合、青色事業専従者給与という制度があります。しかし、配偶者控除や扶養控除が利用できなくなったり、支払える金額や適用要件に制限があります。

配偶者を扶養にしている方は、社会保険は扶養だが、税務上は扶養になれない状況が発生する可能性があります。本業の会社の経理が税務に詳しい場合、副業を怪しまれるかもしれません。

法人の場合は、配偶者に給与を支払っても扶養の範囲内であれば、配偶者控除を受けることができます。社会保険は扶養から外れるかもしれないため、事前に専門家に相談しましょう。

法人化は早すぎても遅すぎてもリスクがあります。だからこそ、今の収入や利益の状況、本業との関係、将来どのような形を目指したいのかを整理したうえで判断することが大切です。

副業と本業、両方を守りながら最適なタイミングを見極めたい方は、木下博昭税理士事務所へご相談ください。数字だけでなく、会社員としての立場や将来の不安を踏まえて、後悔しない法人化をサポートいたします。

参考:国税庁「青色事業専従者給与と事業専従者控除

副業サラリーマンが法人化するメリット

副業を法人化する最大のメリットは、節税できる可能性が広がることです。ただし、やみくもに法人を作れば節税できるわけではありません。

ここでは、法人化したときに得られる代表的なメリットを解説します。

家族に給与を支払っても配偶者控除が適用されるケースがある

先ほど触れましたが、配偶者や家族に専従者給与を支払うと、配偶者控除や扶養控除が使えなくなります。例えば配偶者に年間120万円の給与を支払うと、配偶者控除の38万円が減るため、差額の82万円分所得が減ります。

増える経費120万円(専従者給与)ー減る所得控除38万円(配偶者控除)=82万円

しかし、法人が家族に給与を支払っても年収が一定額以下であれば、配偶者控除や扶養控除を適用できます。120万円が会社の経費となり、38万円の配偶者控除も適用できるでしょう。

ただし、経営者の所得金額によっては配偶者控除の金額が0円になる可能性があります。事前に、税理士などの専門家に相談しましょう。

設立後最大2年間は消費税が免除される

法人を新たに設立した場合、原則として設立から最大2年間は消費税の納税義務が免除されます。すでに納税義務のある方にとっては、2年間分の消費税を免除される可能性があるため魅力に感じるでしょう。

ただし、インボイス登録や1期目の売上高・給与支払額によっては消費税が免除されない可能性があります。

赤字を最長10年間繰り越せる

個人事業の場合、赤字を繰り越せる期間は最長3年間ですが、法人では最長10年間まで赤字を繰り越すことができます。初期投資にお金がかかる事業や、年ごとに売上の波がある事業にとってメリットと言えます。

事業承継がスムーズになる

法人であれば、株式を引き継ぐことがそのまま事業の承継につながるため、手続きをシンプルに進めることができます。「今は副業でも、将来どうなるかはわからない」と考える方にとって、法人化は将来の選択肢を広げる手段のひとつと言えます。

社宅と出張手当で手取りを増やせる

法人にすると、社宅制度や出張手当といった仕組みを活用できます。住まいを社宅扱いにすることで家賃の一部を経費として計上できたり、出張手当も社会通念上相当であれば非課税で受け取れたりできます。同じ売上でも、個人の手取りを増やせるでしょう。

法人化をおすすめしない人の特徴

ここまで、法人化のタイミングやメリットを見てきましたが、すべての副業サラリーマンに法人化が向いているわけではありません。状況によっては、「まだ個人のままのほうが安全」「今は見送ったほうがいい」というケースもあります。

具体的には以下に該当する方です。

  • 副業のお金と個人のお金を明確に分けられない人
  • 利益を自由に使いたい人
  • 事務作業が極端に苦手な人

ここでは、法人化を急がないほうがよい人の特徴を、具体的に解説します。

副業のお金と個人のお金を明確に分けられない人

法人を運営するうえで、お金の区別ができるかどうかは非常に重要です。「少し立て替えただけ」「あとで戻せばいい」といった感覚でお金を動かしてしまうと、税務上のトラブルにつながる恐れがあります。

もし現在、副業とプライベートのお金が混ざっている状態であれば、いきなり法人化を進めるよりも、まずは事業とプライベートのお金を分けることが先決かもしれません。

利益を自由に使いたい人

法人化すると、稼いだお金を全て自由に使えるわけではありません。経営者が会社から受け取る役員報酬にはルールがあります。具体的には以下です。

  • 毎月支給する金額を一定にする
  • 年の途中で理由なく増減できない
  • 変更する場合は期首から3ヶ月以内

「今月は多く使いたいから多めに受け取る」「今月は少なめにする」といった調整はできません。

事務作業が極端に苦手な人

法人は個人に比べて申告書の作成が難しいです。また、年末調整や社会保険などの事務手続きが増えるため、事務作業の量や複雑さは一気に増えます。

事務作業が苦手な方は、税理士のサポートを検討しましょう。税理士顧問料の相場については、以下で詳しく解説しています。

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副業の法人化が会社にバレるケースと対策

副業を法人化する際、会社にバレないか不安ではないでしょうか。結論から言うと、何も考えずに進めてしまうと、会社にバレる可能性はあります。ただし、よくあるパターンを事前に知り、適切な対策を取っておけば、そのリスクを下げることは可能です。

ここでは、副業の法人化が会社にバレやすい代表的なケースと、その対策について解説します。

ケース1:社会保険が二重加入される

よくあるのが、社会保険をきっかけに会社へ知られてしまうケースです。副業で法人を設立し、代表取締役として役員報酬を設定すると、その金額や勤務実態によっては、副業法人でも社会保険への加入が必要になる場合があります。

社会保険が二重加入されると本業の会社に通知が届き、本業の会社に副業法人の存在がバレる恐れがあります。自分が受け取る役員報酬を0円にし、会社から配当金を受けるとことで、対策が可能です。

役員報酬は原則として期の途中で変更できません。法人設立前の段階で、どのような設計にすれば本業との関係に影響が出ないのかを確認しましょう。

ケース2:設立した会社の登記情報に氏名や住所が記載される

法人を設立すると、法務局に登記された情報として、代表者の氏名や住所が公開されます。登記情報は、特別な権限がなくても誰でも取得できるため、取引先や知人が何気なく調べたことをきっかけに、本業の会社へ情報が伝わってしまうことがあります。

法人を作る段階で、どこまでの情報が外部に見えるのかを理解し、住所の扱いや誰を役員にするかなどを慎重に検討することで対策が可能です。

ケース3:会社の関係者や同僚からタレコミされる

意外と多いのが、人づてに情報が広がってしまうケースです。副業の話を同僚に軽く話したり、SNSで法人設立をにおわせる投稿をしたりすると、悪意はなくても第三者から会社に伝わってしまうことがあります。

「この人には話しても大丈夫」と思っていても、情報は思わぬ形で広がるものです。同僚やSNSの発信には注意しましょう。

副業の法人化を検討している方は、木下博昭税理士事務所へご相談ください。節税だけでなく、法人設立のノウハウを活かして全力でサポートさせていただきます。

法人化に失敗しないための準備とポイント

法人化は、作って終わりではありません。むしろ、設立後にどう運営していくかまで見据えて準備できているかどうかで、結果は変わります。

「節税になると思って法人を作ったのに、思ったよりお金が残らなかった」というような失敗を防ぐために、設立前に必ず確認しておきたいポイントを解説します。

設立後のコストを含めたシミュレーションをする

法人化で失敗しやすい原因のひとつが、設立後にかかるコストを十分に把握していないことです。法人には、設立費用だけでなく、均等割や税理士への報酬、社会保険料などのコストが発生します。

「節税で30万円得する」など、節税金額だけを見るのではなく、設立後のコストを含めてシミュレーションすることが大切です。具体的なシミュレーションをせずに法人化を進めてしまうと、「思っていたほどメリットがなかった」と感じてしまいやすくなります。

法人化のシミュレーションについては、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:個人事業主が法人化して節税できるケースは?税金と手取りをシミュレーション

株式会社と合同会社の違いを理解する

法人と一口に言っても、日本でよく使われる会社形態は、株式会社と合同会社の2つです。

一般的に株式会社は社会的な信用力が高く、将来の事業拡大や取引先を意識する場合に向いています。一方で、設立費用や運営コストはやや高めです。

合同会社は設立費用が抑えられ、運営も比較的シンプルなため、副業法人として選ばれることも多い形態です。ただし、会社名の印象や対外的な見え方を気にする人もいます。

「どちらが得か」ではなく、自分の副業の規模・将来像・取引先との関係に合っているかで選ぶことが大切です。

本業の繁忙期を回避できる決算月にする

副業サラリーマンの場合、本業の繁忙期と決算時期が重なると、精神的にも体力的にも負担が大きいです。法人設立時には本業が比較的落ち着いている時期を決算月に設定することが重要です。

決算月は後から変更することもできますが、最初に決めておくと事務負担が減ります。

税金を意識した資本金にする

資本金は「とりあえず少なめでいい」と考えがちですが、税金に大きく関わる重要なポイントです。

例えば、資本金1,000万円以上で設立すると、設立初年度から消費税の納税義務が発生します。また、赤字でも発生する均等割は1,000万円を超えると金額が増えます。

一方で、資本金が少なすぎると、金融機関や取引先からの信用面で不利になるかもしれません。資本金の金額に悩む場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

設立前から専門家に相談する

法人化で後悔する方の中に、「設立前から相談すればよかった」というケースがあります。例えば、以下の内容です。

  • 役員報酬の金額
  • 社会保険の扱い
  • 資本金の設定
  • 決算月の選び方
  • 本業とのバランス

これらは、設立後に変更しようとすると、手間や税金面で不利になることもあります。法人化を考え始めた段階で、副業と会社員という立場の両方を理解している専門家に相談することが、失敗しないための近道です。

平日の昼間は本業が忙しいからは、土日・平日夜間に対応している税理士に相談しましょう。詳しくは、以下の記事で解説しています。

税理士は土日休みばかり?熊本の木下博昭事務所は土日・夜間対応しています

平日は現場で忙しい経営者は、土日・夜間対応の税理士に依頼すると、平日昼間の仕事を休まなくてもよくなります。土日対応になると必ずしも顧問料が高くなるわけではあり…

まとめ

副業での収入が増えると、法人化を考えることもあるでしょう。ただし、法人化は節税になる一方で、タイミングや設計を誤ると負担やリスクが増えてしまう選択でもあります。課税所得や売上規模だけでなく、収入の継続性、本業との関係、将来のライフプランまで含めて判断することが大切です。

会社員の副業では、「会社にバレないか」「社会保険はどうなるのか」といった不安も避けて通れません。このような判断を一人で行うのは難しく、専門家の視点が欠かせません。

法人化を少しでも検討したいと感じた方は、ぜひ木下博昭税理士事務所へご相談ください。副業と本業の両立を前提に、今のあなたに合った最適な選択をご提案いたします。

投稿者プロフィール

木下博昭
木下博昭税理士/南九州税理士会 139642
熊本生まれ 熊本育ち
税理士の木下博昭です。税理士業界歴21年!
節税や補助金、創業融資などを利用して、会社にお金を残す!
これに特化した経営支援を行いたいと思い独立を決意。
令和元年、令和のスタートともに独立しました。
もちろん、税制を活用した節税も行います。
農業コンサルタント向けに税制改正や節税の講演も実施しています。
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