
仕事で使う車を購入・買い替えするとき、「決算前に買えば節税になる」「4年落ちの中古車なら早く経費にできる」と聞くことがあるかもしれません。
個人事業主が仕事で使う車を購入した場合、事業で使う部分は必要経費にできます。たとえば、240万円の車を買ったからといって、240万円がその年の経費になるわけでも、240万円分の税金が減るわけでもありません。
購入した年に経費にできる金額は、新車か中古車か、いつから仕事で使い始めたか、仕事と私用の割合などで変わります。
この記事では、車の購入費を経費にする考え方、中古車の減価償却、ローン・リース、下取り・売却時の注意点を解説します。節税できる金額だけでなく、車を買ったあとに事業へいくらお金が残るかまで確認して判断しましょう。
個人事業主の車購入と節税に関するよくある質問
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車の購入費は全額を経費にできますか?
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原則として、車の購入費を買った年に全額経費にすることはできません。
車は長期間使う資産なので、基本的には「減価償却」によって数年に分けて必要経費にします。仕事と私用の両方で使う車なら、仕事で使っている部分だけが経費の対象です。
ただし、青色申告などの要件を満たし、取得価額が40万円未満である場合は、その年の必要経費にできる特例を使えることがあります。
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仕事と私用を兼ねる車は何割まで経費にできますか?
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一律の上限はありません。
実際に仕事で使った割合を、走行距離や使用日数などをもとに決めます。たとえば年間走行距離の80%が仕事であれば、80%を事業利用割合とする方法があります。
大切なのは、なぜその割合にしたのかを説明できることです。
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現金・ローン・リースではどれが最も節税になりますか?
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一律に最も有利な方法はありません。
現金でもローンでも、購入した車両本体は原則として減価償却します。ローンの返済額がそのまま経費になるわけではありません。リースは契約内容によって税務上の処理が変わります。
節税額だけでなく、購入時に必要なお金、毎月の支払額、総支払額まで比べて決めましょう。
車を買った年にいくら経費にできるかは、車種・購入時期・事業利用割合などで変わります。購入前に確認しておくと、「思ったほど経費にならなかった」という失敗を防ぎやすくなります。
- 1. 個人事業主の車購入と節税に関するよくある質問
- 2. 個人事業主が車を買っても購入代金がそのまま経費になるわけではない
- 2.1. 経費にできるのは仕事で使っている部分だけ
- 2.2. 車の購入費は基本的に数年に分けて経費にする
- 2.3. 40万円未満の車なら青色申告者向けの特例を使える場合がある
- 2.4. 経費にした金額と減る税金は同じではない
- 3. 仕事と私用の両方で使う車は仕事で使う割合を決める
- 4. 新車と中古車では購入後に経費にできるスピードが違う
- 4.1. 4年落ちの中古車でも購入した年に全額経費になるとは限らない
- 4.2. 年末に購入しても1年分を経費にできるわけではない
- 5. 現金・ローン・リースは節税だけで決めない
- 5.1. ローンで買っても返済額がそのまま経費になるわけではない
- 5.2. リースは毎月の支払額だけで判断しない
- 6. 車を下取り・売却するときにも税金がかかる場合がある
- 6.1. 下取りは今の車を売る取引と新しい車を買う取引に分ける
- 6.2. 車を売ると譲渡所得や消費税が発生することがある
- 7. 車を経費にした理由をあとから説明できるようにする
- 8. 車を購入・買い替える前に5つのポイントを確認する
- 9. まとめ
個人事業主が車を買っても購入代金がそのまま経費になるわけではない
車による節税を考えるときは、次の4つを分けるとわかりやすくなります。
- 車を買った金額
- その年に経費にできる金額
- 経費が増えたことで減る税金
- 実際に手元から出ていくお金
経費にできるのは仕事で使っている部分だけ
必要経費にできるのは、事業に使った部分です。
仕事専用の車であれば基本的に事業分が対象になりますが、仕事と私用を兼ねている場合は、実際の使用割合に応じて分けます。たとえば、仕事での使用割合が80%なら、減価償却費についても事業分の80%を経費にする考え方になります。
ガソリン代、高速料金、駐車場代、保険料、車検代などについても、私用分を除いた事業分が必要経費の対象です。
参考:国税庁「家事関連費(第1号関係)」
車の購入費は基本的に数年に分けて経費にする
車は、基本的には使うことで少しずつ価値が下がる資産です。そのため、購入代金を買った年にまとめて経費にするのではなく、「減価償却」によって数年に分けて必要経費にします。
たとえば240万円の車を現金で購入した場合、240万円は一度に手元から出ていきます。しかし、税務上は数年に分けて経費になることがあります。お金を支払う時期と、経費になる時期は同じとは限りません。
参考:国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」
40万円未満の車なら青色申告者向けの特例を使える場合がある
2026年4月1日以後に取得して事業に使い始める一定の減価償却資産については、取得価額が40万円未満で、青色申告などの要件を満たす場合、その年の必要経費にできる特例があります。
年間で使える取得価額の合計の上限は300万円です。安い中古車を購入する場合でも、価格だけで判断せず、特例を使える条件を満たしているか確認しましょう。
参考:財務省「令和8年度税制改正の大綱(3/9)」
経費にした金額と減る税金は同じではない
車を購入して経費が増えても、その金額と同じだけ税金が減るわけではありません。
たとえば、240万円の車を購入して、その年に48万円を減価償却費として経費にできたとします。この場合、48万円の税金が戻ってくるのではなく、所得が48万円減り、その結果として所得税や住民税などが少なくなります。
一方、現金で240万円の車を購入すれば、240万円は手元から出ています。そのため、節税だけを理由に必要のない車を買うと、税金は減っても手元のお金を大きく減らす可能性があります。
経費を使いすぎてお金が残らない理由については、以下の記事もご覧ください。
仕事と私用の両方で使う車は仕事で使う割合を決める
仕事と私用を兼ねている車は、走行距離や使用日数などをもとに、実際に仕事で使っている割合を決めます。たとえば、年間1万km走行し、そのうち8,000kmが仕事であれば、80%を事業利用割合とする方法があります。
事業利用割合を説明できるように、次のような記録を残しておくと安心です。
- 仕事で走った距離
- 訪問先
- ETCの利用明細
- スケジュール
- ガソリン代などの領収書
「個人事業主だから80%」などと根拠なく決めるのではなく、実際の使い方に合った割合にしましょう。
新車と中古車では購入後に経費にできるスピードが違う
中古車は、新車より短い年数で減価償却できる場合があります。そのため「中古車の方が節税しやすい」といわれることがありますが、早く経費にできることだけで車を選ぶのはおすすめできません。
| 確認すること | 新車 | 中古車 |
|---|---|---|
| 減価償却する年数 | 原則として法定耐用年数 | 経過年数によって短くなる場合がある |
| 経費化の速さ | 数年に分けやすい | 短期間で経費にできる場合がある |
| 購入価格 | 車種・仕様による | 年式・走行距離・状態による |
| 購入後の負担 | 保証や維持費を確認 | 修理費や故障リスクも確認 |
一般用の新車では、普通自動車の法定耐用年数は6年、総排気量0.66リットル以下の小型車は4年です。
中古車は、取得後に使える期間を合理的に見積もれる場合はその年数を使い、難しい場合は法定耐用年数と経過年数から計算する簡便法を使えることがあります。
参考:国税庁「耐用年数(車両・運搬具/工具)」
参考:国税庁「No.5404 中古資産の耐用年数」
4年落ちの中古車でも購入した年に全額経費になるとは限らない
「4年落ちの中古車なら1年で経費にできる」と聞くことがありますが、必ずしもそうではありません。
一般用の普通自動車は法定耐用年数が6年です。新車から4年経過した中古車を購入し、簡便法を使った場合、耐用年数が2年になることがあります。
ただし、個人事業主が原則として使用する定額法では、耐用年数2年の償却率は0.500です。さらに、購入した年は、実際に仕事で使った月数と事業利用割合も反映します。
たとえば次の条件で考えてみます。
| 項目 | 前提 |
|---|---|
| 車 | 新車から4年経過した普通自動車 |
| 取得価額 | 240万円 |
| 耐用年数 | 2年 |
| 償却方法 | 定額法 |
| 償却率 | 0.500 |
| 仕事で使い始めた月 | 7月 |
| 事業利用割合 | 80% |
購入した年の減価償却費は、48万円です。
- 240万円 × 0.500 × 6か月 ÷ 12か月 × 80% = 48万円
今回の例では、240万円の車を買っても購入した年に経費にできる減価償却費は48万円です。さらに、48万円がそのまま節税額になるわけでもありません。
車を買った金額、経費になる金額、減る税金、手元から出るお金は別の数字だと考えましょう。
参考:国税庁「定額法と定率法による減価償却」
年末に購入しても1年分を経費にできるわけではない
減価償却では、契約した日や代金を支払った日ではなく、実際に事業で使い始めた時期が重要です。
たとえば12月から仕事で使い始めた場合、その年は1か月分をもとに減価償却費を計算します。12月に契約しても、納車が翌年で、仕事に使い始めるのも翌年なら、その年の減価償却費は計上できません。
「決算前に買えば節税になる」と急いで契約する前に、いつ納車され、いつから仕事で使えるのかを確認しましょう。
現金・ローン・リースは節税だけで決めない
現金、ローン、リースでは、お金の支払い方が異なります。
| 確認すること | 現金 | ローン | リース |
|---|---|---|---|
| 車両本体の処理 | 原則として減価償却 | 原則として減価償却 | 契約内容による |
| 購入時の負担 | 大きい | 抑えられる場合がある | 初期費用は契約による |
| 毎月の支払い | 原則なし | 返済が続く | リース料を支払う |
| 主な確認事項 | 手元資金 | 金利・返済期間 | 契約期間・満了時条件 |
ローンで買っても返済額がそのまま経費になるわけではない
現金で買ってもローンで買っても、車両本体は原則として減価償却します。
ローン返済のうち元本部分は、借りたお金を返しているだけなので、返済そのものを必要経費にはできません。一方、事業用の借入れに対応する利息は、必要経費になる場合があります。
つまり、ローンを利用するときは、
- 車両本体は減価償却
- 元本返済は経費ではない
- 利息は事業分が経費になる場合がある
と分けて考えます。
節税だけでなく、購入後に十分な運転資金を残せるか、利息を含めた総支払額はいくらになるかも確認しましょう。
リースは毎月の支払額だけで判断しない
リースは、契約内容によって税務上の処理が変わります。契約前には、毎月のリース料だけでなく、次の項目も確認しましょう。
- 初期費用
- 契約期間
- 走行距離の制限
- 途中解約の条件
- 契約終了後に返却するのか買い取るのか
- 契約期間全体の総支払額
「リースならすべて経費になる」と考えず、契約内容を確認することが大切です。
参考:国税庁「所有権移転外ファイナンス・リース取引について賃借人が賃貸借処理した場合の取扱い」
車を下取り・売却するときにも税金がかかる場合がある
車を買い替える場合は、新しい車だけでなく、現在使っている車を売ったときの税金も確認しましょう。
下取りは今の車を売る取引と新しい車を買う取引に分ける
下取りを利用する場合は、
- 今の車を売る
- 新しい車を買う
という2つの取引に分けて考えます。
たとえば、新しい車が400万円、下取価格が100万円で、差額300万円を支払う場合でも、「300万円の車を買った」と考えるわけではありません。見積書では、新しい車の価格、下取価格、値引き、諸費用をそれぞれ確認しましょう。
差額だけで処理すると、新しい車の減価償却や古い車の売却時の税金を正しく計算できない可能性があります。
車を売ると譲渡所得や消費税が発生することがある
車は、購入したときの金額より安く売っても、税務上の利益が出ることがあります。たとえば、300万円で購入した事業用車両を減価償却し、売却時点で帳簿上60万円の価値が残っているとします。
この車を100万円で売れば、税務上は40万円の譲渡益が出ることがあります。
車などの譲渡所得には、短期・長期の譲渡所得を合わせて最高50万円の特別控除を使える場合があります。また、所有期間が5年を超える長期譲渡所得では、特別控除後の金額の2分の1が総合課税の対象になります。
さらに、消費税の課税事業者が事業用車両を売った場合は、所得税の譲渡所得とは別に、原則として消費税の課税対象になります。
買い替え時は、新しい車の節税だけでなく、現在の車を売ったときの税金も合わせて確認しましょう。
参考:国税庁「No.1460 譲渡所得(土地、建物及び株式等以外の資産を譲渡したとき)」
参考:国税庁「No.3152 譲渡所得の計算のしかた(総合課税)」
参考:国税庁「事業用及び家事用の両方に使用している資産を売却した場合の課税関係」
車を経費にした理由をあとから説明できるようにする
車を経費にするときは、金額だけでなく、「なぜ仕事で必要なのか」「実際にどのように使っているのか」を説明できるようにしておくことも大切です。高級車や2台目の車だからといって、一律に経費にならないわけではありません。
ただし、顧客先への訪問、商品の運搬、従業員の利用など、事業に必要な理由と実際の使い方が一致していることが重要です。また、仕事と私用を兼ねる場合は、根拠なく事業利用割合を決めないようにしましょう。
購入から売却まで、次のような資料を保管しておくと確認しやすくなります。
- 売買契約書、ローン・リース契約書
- 請求書、領収書、車検証
- 固定資産台帳、減価償却費の計算資料
- ETC明細、走行記録
- ガソリン代や駐車場代などの領収書
- 下取り・売却時の見積書や契約書
税務調査のためだけではなく、確定申告時に正しい金額を確認するためにも、日ごろから記録を残しておきましょう。
車を購入・買い替える前に5つのポイントを確認する
車を契約する前に、次の5項目を確認しましょう。
- 仕事で本当に必要な車か
何のために使うのか、現在の車ではなぜ足りないのかを整理します。 - 購入後も手元に十分なお金が残るか
車両価格だけでなく、頭金、ローン、保険、税金、駐車場代なども含めて確認します。 - 購入した年はいくら経費にできるか
取得価額、耐用年数、使用開始月、事業利用割合から減価償却費を確認します。 - 今の車を売ると税金が発生しないか
下取価格や売却価格、減価償却後の取得費を確認します。 - 購入と売却を合わせて判断したか
新しい車による節税だけでなく、現在の車の売却と購入後の手元資金まで含めて判断します。
節税のためだけに車を買うのではなく、購入後に事業へ十分なお金を残せるかを確認することが重要です。
購入前には、
- 購入した年の減価償却費
- 事業利用割合
- ローンやリースを含めた支払額
- 今の車を売ったときの税金
- 購入後に残る手元資金
を確認しましょう。
木下博昭税理士事務所では、車の購入・売却に伴う税金だけでなく、事業にお金を残す視点も含めて相談できます。
まとめ
個人事業主が車を購入するときは、次の4点を確認しましょう。
- 車が仕事に本当に必要か
- 購入した年にいくら経費にできるか
- 今の車を売る場合、税金にどう影響するか
- 車を買ったあとも事業に必要なお金が残るか
特に重要なのは、「車を買った金額」「経費になる金額」「減る税金」「手元から出ていくお金」は別の数字だということです。
新車か中古車か、現金・ローン・リースのどれを選ぶか、現在の車をいくらで売るかによって結果は変わります。「車を買えば節税になる」という理由だけで契約せず、購入前に税金と手元資金の両方を確認して判断しましょう。
投稿者プロフィール

- 税理士/南九州税理士会 139642
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熊本生まれ 熊本育ち
税理士の木下博昭です。税理士業界歴21年!
節税や補助金、創業融資などを利用して、会社にお金を残す!
これに特化した経営支援を行いたいと思い独立を決意。
令和元年、令和のスタートともに独立しました。
もちろん、税制を活用した節税も行います。
農業コンサルタント向けに税制改正や節税の講演も実施しています。
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