
売上や利益はあるのに「なぜかお金が残らない」と感じる個人事業主の方は少なくありません。このような場合、税金そのものが高いとは限りません。税金や保険料の支払いが増えている場合もあれば、支払時期が重なっていたり、借入金の返済や生活費などで現金が減っていたりする場合もあります。
この記事では、個人事業主がお金を残せなくなる原因を「税金・保険料の負担」「支払時期」「税金以外の出金」の3つに分けて解説します。何から確認すればよいのか、税金用のお金をどのように残せばよいのかも順番に解説します。
個人事業主の税金貧乏に関するよくある質問
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税金貧乏とはどのような状態ですか?
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税金貧乏は正式な税務用語ではありません。
利益が出ていても、税金や保険料などを支払った後に、事業や生活に必要な現金が十分に残らない状態を表す言葉として使われています。原因は税金だけとは限らないため、まず「何にお金が出ているのか」を分けて確認することが大切です。
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税金のためにいくら残しておけばよいですか?
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「売上の○%」「利益の○%」のように一律では決められません。
前年の確定申告書や納税通知書などを確認し、今年の利益見込みから今後支払う税金・保険料を見積もります。そのうえで、支払期限までの残り月数で割り、毎月分けておく方法があります。
消費税や予定納税の対象になるか、所得控除をいくら受けられるかなどによっても必要額は変わるため、ご自身の数字で確認しましょう。
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税金が苦しいなら法人化した方がよいですか?
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法人化だけで資金繰りの問題が解決するとは限りません。
税金だけでなく、社会保険料、会社の設立・維持費、個人で使えるお金、今後の事業計画まで含めた比較が必要です。すでに税金などの支払期限が迫っている場合は、法人化を考えるより先に、現在の支払いへの対応を優先しましょう。
- 1. 個人事業主の税金貧乏に関するよくある質問
- 2. 個人事業主がお金を残せなくなる原因は税金だけではない
- 3. 個人事業主が税金貧乏だと感じる3つの原因
- 3.1. 税金や国民健康保険料などの負担が増えている
- 3.2. 税金の支払いが同じ時期に重なっている
- 3.3. 借入金の返済や生活費などでお金が減っている
- 4. なぜお金が残らないのかを3つの順番で確認する
- 4.1. ステップ1:去年より利益や税金が増えていないか確認する
- 4.2. ステップ2:次にこれから支払う税金と時期を確認する
- 4.3. ステップ3:税金以外に何へお金を使っているか確認する
- 5. 税金貧乏から抜け出すためにできること
- 5.1. 払いすぎを防ぐために経費や控除の漏れを確認する
- 5.2. 税金用のお金を毎月分けて残しておく
- 5.3. 借入金の返済や生活費など税金以外の支出も見直す
- 5.4. 税金を期限までに払えないときは早めに相談する
- 6. 税金を減らすことだけで対策を決めない
- 6.1. 小規模企業共済やiDeCoは手元のお金が減っても困らないか確認する
- 6.2. 法人化は税金が安くなるかだけで決めない
- 7. 税金を払った後にいくら残るか分からないときは税理士に相談する
- 8. まとめ
個人事業主がお金を残せなくなる原因は税金だけではない
利益が出ていることと、銀行口座にお金が残っていることは同じではありません。
たとえば、借入金の元金を返済すると現金は減りますが、元金部分は必要経費にはなりません。そのため、決算書では利益が出ているのに、実際にはお金が減っていることがあります。
ほかにも、生活費、設備や在庫の購入、売掛金の回収遅れなどによって現金は減ります。「税金が高いからお金が残らない」と決めつけるのではなく、まず何にお金が出ているのかを確認することが重要です。
個人事業主のお金の残し方については、以下記事をご確認ください。
個人事業主が税金貧乏だと感じる3つの原因
お金が残らない原因は、大きく次の3つに分けられます。1つだけではなく、複数の原因が重なっていることもあります。
税金や国民健康保険料などの負担が増えている
前年より所得が増えれば、所得税や翌年度の住民税、国民健康保険料などの負担が増えることがあります。また、これまで消費税の申告・納付が必要なかった方が課税事業者になれば、消費税の納税資金も準備しなければなりません。
国民健康保険料は自治体や年度、所得、世帯の状況などによって変わります。一律の割合で判断せず、自治体から届く通知書を確認しましょう。
参考:熊本市「国民健康保険 保険料について」
税金の支払いが同じ時期に重なっている
年間では支払える金額でも、税金や保険料の支払いが近い時期に重なると、その時期だけ資金繰りが苦しくなることがあります。たとえば、所得税だけを見ていると、その後に支払う住民税や国民健康保険料などを見落とすことがあります。
また、予定納税の対象になった場合も注意が必要です。
予定納税は所得税などの一部をあらかじめ支払い、確定申告で精算する制度です。そのため、予定納税そのものによって年間の税負担が増えるわけではありませんが、事前に納税資金を用意する必要があります。
参考:国税庁「No.2040 予定納税」
借入金の返済や生活費などでお金が減っている
税金以外の出金も確認しましょう。代表的なものは次のとおりです。
- 借入金の元金返済
- 生活費
- 設備の購入
- 在庫の増加
- 売掛金の回収遅れ
特に借入金の元金返済は、現金は減りますが必要経費にはなりません。そのため、「利益はあるのに、預金がほとんど増えていない」ということも起こります。
通帳だけでなく、返済予定表や売掛金の一覧、毎月の生活費も一緒に確認しましょう。
| 主な症状 | 確認するもの | 最初にすること |
|---|---|---|
| 税金や国民健康保険料などの負担が増えている | 確定申告書、決算書、通知書 | 前年と当年の利益・控除・負担額を比べる |
| 税金の支払いが同じ時期に重なっている | 納付書、年間の支払予定 | いつ、いくら支払うかを確認する |
| 借入金の返済や生活費などでお金が減っている | 通帳、返済予定表、売掛金一覧、生活費 | 税金以外の出金と入金時期を確認する |
たとえば、次のような状態を考えてみましょう。
- 500万円(決算上の利益)-150万円(税金・保険料)-120万円(借入金の元金返済)-250万円(生活費)=年間の手元資金は20万円減少
利益は500万円ありますが、実際のお金は年間20万円減っています。大切なのは、「利益がある=同じ金額の現金が残る」わけではないという点です。
なぜお金が残らないのかを3つの順番で確認する
お金が残らない原因を探すときは、次の順番で確認すると整理しやすくなります。
ステップ1:去年より利益や税金が増えていないか確認する
まず、前年と当年の数字を比べます。確認したいのは、主に次の項目です。
- 売上
- 利益
- 所得控除
- 所得税
- 住民税
- 国民健康保険料
確定申告書、青色申告決算書・収支内訳書、納税通知書などを並べ、「どの金額が増えたのか」を確認しましょう。経費や所得控除の漏れがあれば、必要以上に税金を支払っている可能性もあります。
また、予定納税や消費税の支払いが新たに発生している場合は、年間の納税スケジュールも確認してください。
税金や社会保険料の負担が増えた原因を詳しく確認したい方は、以下の記事もご覧ください。
ステップ2:次にこれから支払う税金と時期を確認する
次に、これから支払う税金や保険料を一覧にします。「何を払うか」だけでなく、「いつ、いくら払うか」まで確認することがポイントです。
| 何を払うか | いくら払うか | いつ払うか |
|---|---|---|
| 所得税 | 確定申告書で確認 | 原則3月15日まで |
| 住民税 | 納税通知書で確認 | 自治体の納税通知書で確認 |
| 国民健康保険料 | 納入通知書で確認 | 自治体の通知書で確認 |
| 国民年金 | 納付書等で確認 | 納付書等で確認 |
| 予定納税 | 税務署からの通知で確認 | 原則7月31日、11月30日 |
| 個人事業税 | 都道府県からの通知で確認 | 都道府県からの通知で確認 |
| 消費税等 | 申告書で確認 | 原則3月31日 |
対象にならないものは「対象外」としておけば問題ありません。
全国共通の日付を覚えるより、実際に届いた通知書や納付書に記載された期限を確認する方が確実です。
参考:国税庁「主な国税の納期限(法定納期限)及び振替日」
参考:日本年金機構「国民年金保険料」
ステップ3:税金以外に何へお金を使っているか確認する
最後に、税金以外の支払いを確認します。通帳を見ながら、次のような支払いが大きくなっていないかを確認してください。
- 借入金の返済
- 生活費
- 設備の購入
- 在庫の仕入れ
- その他の大きな支出
あわせて、売掛金の入金が予定より遅れていないかも確認します。税金を減らしても、ほかの支出が大きければ資金繰りは改善しません。
税金貧乏から抜け出すためにできること
原因が分かったら、それに合った対策を考えます。「税金が苦しいから、とにかく節税する」のではなく、支払期限、申告内容、納税資金、税金以外の出金という順番で確認しましょう。
払いすぎを防ぐために経費や控除の漏れを確認する
まず、必要経費や所得控除に漏れがないか確認します。必要経費として計上できるのは、原則として事業に必要な支出です。家計の支出や、事業と関係のない支出まで経費にすることはできません。
青色申告特別控除なども、適用するにはそれぞれ要件があります。
一方で、税金を減らすためだけに必要のない物を買うのも注意が必要です。10万円使ったからといって、税金が10万円減るわけではありません。不要な支出を増やせば、税金は減っても手元のお金はさらに少なくなることがあります。
経費を使いすぎてお金が残らない理由も確認したい方は、以下の記事もご確認ください。
参考:国税庁「No.2210 必要経費の知識」
参考:国税庁「No.2072 青色申告特別控除」
税金用のお金を毎月分けて残しておく
納税資金を普段使うお金と分けて管理すると、「使ってよいお金」が分かりやすくなります。たとえば、税金用の口座を別に用意する方法です。
まず、これから支払う税金・保険料の見込額を確認します。そのうえで、これから支払う見込額 ÷ 支払期限までの残り月数を目安に、毎月分けましょう。
「利益の30%を残す」といった一律の割合ではなく、ご自身の申告内容と支払予定から必要額を決めることが重要です。
借入金の返済や生活費など税金以外の支出も見直す
税金以外の出金が大きい場合は、そちらの見直しも必要です。借入金の返済が資金繰りを圧迫している場合でも、自己判断で返済を止めるのではなく、必要に応じて金融機関へ相談しましょう。
生活費についても、単純に切り詰めるのではなく、「毎月いくら必要なのか」を把握することから始めます。売掛金の回収が遅れている場合は、請求日、入金予定日、実際の入金日を確認し、入金までの期間が長くなっていないかも見てください。
税金を期限までに払えないときは早めに相談する
税金を期限までに納めることが難しいと分かった場合は、そのままにせず早めに相談しましょう。主な相談先は次のとおりです。
- 国税:所轄税務署
- 住民税・国民健康保険料:自治体
- 国民年金:年金事務所等
事情や条件によって利用できる制度は異なります。相談すれば必ず分割払いや猶予が認められるわけではありませんが、支払えないと分かった段階で確認することが大切です。
ここまで確認したら、次の順番で進めてみてください。
今すぐ確認すること
- 税金や保険料の支払期限が迫っていないか
- 期限までに支払えるだけのお金があるか
支払いが難しい場合は、該当する窓口へ早めに相談します。
今期中に確認すること
- 経費や控除に漏れがないか
- 税金用のお金を分けているか
- 借入金の返済が大きすぎないか
- 生活費を把握できているか
- 売掛金の回収が遅れていないか
中長期で検討すること
- 利用できる節税制度がないか
- 法人化を検討する段階に来ていないか
- 今後の資金繰りを予測できる状態になっているか
参考:国税庁「納税に関する総合案内」
税金を減らすことだけで対策を決めない
節税できる制度でも、手元のお金が減ることがあります。そのため、「税金がいくら減るか」だけでなく、「支払った後にいくら残るか」まで確認することが大切です。
小規模企業共済やiDeCoは手元のお金が減っても困らないか確認する
小規模企業共済やiDeCoの掛金は、一定の要件のもとで所得控除の対象になります。所得控除によって税負担を抑えられる一方、掛金として支払った分だけ現在の手元資金は減ります。
そのため、
- 運転資金は足りるか
- 生活費を確保できるか
- 急な支払いに対応できるか
- お金を自由に使えない期間があっても問題ないか
といった点まで確認してから利用を判断しましょう。節税額だけで決めないことが重要です。
参考:国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」
法人化は税金が安くなるかだけで決めない
利益が増えてくると、「法人にした方が税金は安くなるのでは」と考える方もいるでしょう。しかし、法人化の有利・不利は税金だけでは判断できません。
- 個人事業主のままの場合の税金・保険料
- 法人にした場合の法人税など
- 社会保険料
- 会社の設立費用
- 毎年の維持費
- 経理や申告の負担
- 個人と法人にそれぞれいくらお金が残るか
- 今後の売上や利益の見込み
などを比較する必要があります。「法人化すれば必ず節税できる」と考えず、ご自身の数字で試算してから判断しましょう。
個人事業主の法人化については、以下の記事をご確認ください。
税金を払った後にいくら残るか分からないときは税理士に相談する
「利益は出ているのに、なぜお金が残らないのか分からない」という場合は、税金だけを見るのではなく、事業全体のお金の流れを確認する必要があります。相談するときは、可能であれば次の資料を用意しておくと状況を整理しやすくなります。
- 確定申告書
- 青色申告決算書・収支内訳書
- 税金・保険料の納付書や通知書
- 預金通帳
- 借入金の返済予定表
- 売掛金の一覧
- 毎月の主な生活費
すべてそろっていなくても、今ある資料から確認を始めることはできます。顧問税理士をすぐに変更する必要もありません。
まずは現在の数字をもとに、「なぜお金が残らないのか」「どこから見直すべきか」を整理するだけでも、今後の資金繰りを考えやすくなります。
まとめ
個人事業主が「税金を払うとお金が残らない」と感じたときは、税金だけを原因と考えないことが大切です。まず、次の3つに分けて確認しましょう。
- 税金や保険料の負担が増えていないか
- 税金などの支払時期が重なっていないか
- 借入金の返済や生活費など、税金以外の出金が増えていないか
最初に支払期限が迫っていないかを確認し、その後、年間の支払予定と税金以外のお金の流れを整理します。経費や控除の漏れを確認したり、税金用のお金を毎月分けたりすることも重要です。節税制度や法人化は、その後に検討します。
「税金をいくら減らせるか」ではなく、「税金や必要な支払いをした後に、事業と生活を続けられるだけのお金が残るか」まで考えることが、税金貧乏から抜け出すためのポイントです。
税金や保険料を支払った後にいくら残るのか分からない場合や、節税・法人化まで含めて資金繰りを整理したい場合は、木下博昭税理士事務所へご相談ください。現在の数字を確認しながら、何から見直すべきかを一緒に整理しましょう。
投稿者プロフィール

- 税理士/南九州税理士会 139642
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熊本生まれ 熊本育ち
税理士の木下博昭です。税理士業界歴21年!
節税や補助金、創業融資などを利用して、会社にお金を残す!
これに特化した経営支援を行いたいと思い独立を決意。
令和元年、令和のスタートともに独立しました。
もちろん、税制を活用した節税も行います。
農業コンサルタント向けに税制改正や節税の講演も実施しています。
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