
個人事業を続けながらマイクロ法人の設立を考えていると、「税金や社会保険料を減らせるのでは」と期待する方もいるでしょう。マイクロ法人とは、一般に、社長本人を中心に運営する小規模な法人を指す言葉です。
ただし、法人を作れば必ず負担が減るわけではありません。会社を維持する費用が増えたり、経理の手間が増えたりして、結果として個人事業だけの方がお金が残ることもあります。
大切なのは、「税金がいくら減るか」だけを見るのではなく、税金・社会保険料・会社の維持費・生活費まで含めて比べることです。
この記事では、個人事業を続けながらマイクロ法人を作ろうと考えている方に向けて、後悔しやすい理由と設立前の確認方法を解説します。
マイクロ法人に関するよくある質問
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会社員でもマイクロ法人を作れば社会保険料が安くなりますか?
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法人を作るだけで、社会保険料が安くなるとは限りません。
会社員として働きながら自分の法人からも役員報酬を受け取り、両方の会社で社会保険の加入対象になる場合は、それぞれの報酬を合計して保険料を計算します。そのうえで、それぞれの会社から受け取る報酬の割合に応じて保険料を分けます。
そのため、「法人から受け取る役員報酬を低くすれば、簡単に社会保険料を下げられる」とは限りません。
参考:日本年金機構「複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き」
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マイクロ法人が赤字でも法人税の申告は必要ですか?
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赤字で法人税の納付額がない場合でも、原則として法人税の申告は必要です。
「税金を払わなくてよい」と「申告しなくてよい」は別の話です。法人を作ったあとは、日々の売上や経費を記録し、決算を行い申告書を作成します。自分で対応するのが難しい場合は、税理士への依頼費用も考えておきましょう。
- 1. マイクロ法人に関するよくある質問
- 2. マイクロ法人で後悔する5つの理由
- 2.1. 会社を維持する費用が節税できる金額を上回る
- 2.2. 社会保険料が思ったほど安くならない
- 2.3. 個人と法人それぞれの経理・税金の申告に手間がかかる
- 2.4. 会社にお金があっても生活費に自由に回せない
- 2.5. 会社をやめるときにも費用と手続きが必要になる
- 3. マイクロ法人を作る前に確認したい4つの判断基準
- 3.1. 個人と法人の仕事・売上・経費を分けて管理できるか
- 3.2. 税金・社会保険料・維持費を払っても手元のお金が増えるか
- 3.3. 役員報酬を低くしても生活費に困らないか
- 3.4. 売上が減っても会社を続けられるか
- 4. マイクロ法人を作らず個人事業を続ける方がよいケース
- 4.1. 利益が少なく法人を作っても負担が減らない
- 4.2. 法人で行う事業や継続的な売上の見通しが立っていない
- 4.3. 経理や手続きの負担を増やさず本業に集中したい
- 5. マイクロ法人を作る前に税理士へシミュレーションを依頼する
- 6. まとめ
マイクロ法人で後悔する5つの理由
マイクロ法人で後悔しやすいのは、税金や社会保険料だけを見て設立したケースです。法人を作る前に、次の5つを確認しておきましょう。
会社を維持する費用が節税できる金額を上回る
税金が減っても、会社を維持する費用の方が大きければ、結果として手元に残るお金は減ります。
たとえば、法人には利益が出ていなくても法人住民税の均等割の負担があります。また、状況に応じて次のような費用がかかります。
- 会計ソフトの利用料
- 税理士への記帳・決算申告の依頼料
- 法人口座や各種サービスの利用料
- 会社設立時の登記などにかかる費用
見るべきなのは「いくら節税できるか」ではなく、法人を作ったことで年間の支出がいくら増え、その結果いくら残るのかです。
法人のランニングコストの目安については、以下の記事もご確認ください。
参考:熊本市「法人市民税とは」
社会保険料が思ったほど安くならない
法人は、原則として社会保険の適用事業所になります。社長1人だけの法人でも対象になる場合があります。健康保険や厚生年金の保険料は、基本的に本人だけが払うわけではありません。法人側にも負担があります。
そのため、自分の給与にあたる「役員報酬」を低く設定して本人負担が下がったとしても、法人側の負担まで含めて確認する必要があります。
現在加入している健康保険や年金から切り替えることで、家計と会社を合わせた負担がどう変わるのかを比べましょう。
参考:日本年金機構「厚生年金保険のしくみを知る」
個人と法人それぞれの経理・税金の申告に手間がかかる
個人事業と法人を両方続ける場合、経理や申告の手間も2つに分かれます。たとえば、次のような管理が必要です。
- この売上は個人と法人のどちらのものか
- この経費はどちらが負担するのか
- どちらの口座から支払うのか
- 契約書や請求書をどちらの名義にするのか
個人事業の確定申告だけでなく、法人の決算と申告も必要になります。
税理士に記帳や申告を依頼した場合でも、領収書や請求書などの資料を集める作業は必要です。経理にかかる時間まで含めて、「法人を作るメリットがあるか」を考えましょう。
会社にお金があっても生活費に自由に回せない
法人の口座に入っているお金は、社長個人のお金ではありません。そのため、「会社に100万円あるから、そのまま自分の生活費として使える」というものではありません。
社長が法人から定期的に受け取る給与を「役員報酬」といいます。生活費を考えるときは、役員報酬の手取りと、個人事業から生活費に回せるお金を比較する必要があります。
また、役員報酬は好きなときに自由に変更できるわけではありません。会社の税金を計算するときに経費として認めてもらうには、一定のルールがあります。
「生活費が足りなくなったから来月から役員報酬を増やす」と簡単には考えず、設立前に必要な生活費を計算しておきましょう。
参考:国税庁「No.5202 役員等に対する経済的利益」
参考:国税庁「No.5211 役員に対する給与」
会社をやめるときにも費用と手続きが必要になる
法人は、事業をやめれば自動的になくなるわけではありません。会社を正式に終了するには、会社を終了させる「解散」と、会社に残っているお金や借金などを整理する「清算」といった手続きが必要です。
登記にも費用がかかり、司法書士や税理士などへ依頼すれば専門家への報酬も必要になります。
「とりあえず作って、必要なくなったらやめればよい」と考えるのではなく、やめる場合にも手間と費用がかかることを知ったうえで設立しましょう。
とりあえず会社を作るリスクについては、以下の記事をご確認ください。
マイクロ法人を作る前に確認したい4つの判断基準
マイクロ法人の設立は、必ず後悔するわけではありません。ここでは、「後悔する理由」が自分にも当てはまるかを、確認していきましょう。
確認する順番は次の4つです。
個人と法人の仕事・売上・経費を分けて管理できるか
まず、「個人で行う仕事」と「法人で行う仕事」を分けられるか確認します。たとえば、次の内容です。
- どの仕事を個人で受けるのか
- どの仕事を法人で受けるのか
- 誰が取引先へ請求するのか
- 売上をどの口座へ入金するのか
- 経費を個人と法人のどちらが負担するのか
契約書、請求書、入金先、実際に行った仕事が一致していることが大切です。
まず紙や表計算ソフトなどに、「個人の仕事」「法人の仕事」を書き出してみましょう。明確に分けられない場合は、設立前に税理士へ確認することをおすすめします。
税金・社会保険料・維持費を払っても手元のお金が増えるか
次に、個人事業だけを続ける場合と、法人を併用する場合を比べます。節税額だけを見るのではなく、最終的に残るお金を確認してください。
| 比較するもの | 個人事業のみ | 個人事業+法人 |
|---|---|---|
| 税金 | 個人にかかる税金を確認 | 個人と法人にかかる税金を確認 |
| 社会保険料 | 現在の負担額を確認 | 本人分と法人分を合わせて確認 |
| 維持費 | 会計ソフトや税理士費用などを確認 | 法人の会計・決算申告などで増える費用を確認 |
| 経理の時間 | 個人事業の経理にかかる時間 | 個人と法人の両方を管理する時間 |
| お金の残り方 | 生活費と事業資金を確認 | 個人が使えるお金と会社に残るお金を分けて確認 |
法人を作る場合は、設立時にかかる費用も確認しましょう。
また、新しく法人を作ったからといって、必ず消費税が免除されるわけではありません。資本金、インボイス登録、売上などによって扱いが変わります。
まずは前年の確定申告書を用意し、現在の売上・経費・社会保険料を使って比較してみましょう。
法人化後の手取りシミュレーションについては、以下の記事をご確認ください。
役員報酬を低くしても生活費に困らないか
法人を作る場合は、役員報酬を決める前に毎月必要な生活費を確認しましょう。たとえば、毎月30万円必要なのに、役員報酬の手取りが25万円しかなければ、家計が苦しくなります。
社会保険料を下げることだけを考えて、役員報酬を低く決めるのは避けましょう。
また、厚生年金には、加入期間だけでなく報酬額によって将来受け取る年金額が変わる部分があります。役員報酬を低くする場合は、現在の負担だけでなく将来への影響も確認することが大切です。
- 毎月必要な生活費
- 必要な手取り額
- 役員報酬
の順番で考えると整理しやすくなります。
売上が減っても会社を続けられるか
最後に、売上が予定どおりにならなかった場合も考えておきましょう。たとえば、
- 大きな取引先との契約が終わる
- 売上が数か月下がる
- 入金が遅れる
といった場合です。
現在の売上だけで判断せず、売上が減った場合でも会社の費用と生活費を払えるかを確認しましょう。「現在の売上」「売上が2割減った場合」など、複数のパターンで手元に残るお金を計算すると判断しやすくなります。
マイクロ法人を作らず個人事業を続ける方がよいケース
節税目的でマイクロ法人を作る場合、個人事業を続ける方が負担が減るケースがあります。ここでは、マイクロ法人を作らず個人事業を続ける方がよいケースについて解説します。
利益が少なく法人を作っても負担が減らない
税金や社会保険料が減っても、法人の維持費を加えると手元のお金が増えない場合は、急いで法人を作る必要はありません。現在の利益だけで決めず、今後利益が増えたときに改めて検討する方法もあります。
法人で行う事業や継続的な売上の見通しが立っていない
法人でどの仕事を行い、どのように売上を作るのかが決まっていない場合は、まず個人事業で事業を安定させてから検討する方法があります。
一方、法人には税金以外にも、取引先との契約や事業上の信用などを目的として設立するケースがあります。「税金を減らしたいから」だけではなく、なぜ法人を作るのかを一度書き出してみましょう。
経理や手続きの負担を増やさず本業に集中したい
法人を作ると、個人事業だけの場合よりも経理や手続きが増えます。売上を増やすための仕事に時間を使いたい方にとっては、個人事業を続ける方が合っていることもあります。
経理を税理士などへ依頼する方法もありますが、その場合は依頼費用を含めて法人を作るメリットが残るか確認しましょう。
マイクロ法人を作る前に税理士へシミュレーションを依頼する
マイクロ法人を作るか迷っている場合は、設立前に次の2つを比較しましょう。
- 個人事業だけを続ける場合
- 個人事業と法人を併用する場合
比較するときは、税金だけではなく、社会保険料や法人の維持費、生活費まで含めます。
税理士へ相談する場合は、次の資料を用意しておくと具体的なシミュレーションをしやすくなります。
- 直近の確定申告書
- 現在支払っている社会保険料がわかる資料
- 今後の売上・経費の見込み
- 毎月必要な生活費
- 法人で行う予定の仕事
「法人を作った方が税金が安くなるか」だけでなく、最終的に手元にいくら残るのかまで確認してから判断することが大切です。
木下博昭税理士事務所では、法人を作った場合だけではなく、個人事業を続けた場合と比較できます。まずはお気軽に、ご相談ください。
まとめ
マイクロ法人を作れば、必ず税金や社会保険料の負担が軽くなるわけではありません。設立前に確認したいのは、次の4点です。
- 個人と法人の仕事を分けられるか
- 税金や維持費を払ったあともお金が残るか
- 役員報酬で生活費をまかなえるか
- 売上が減っても法人を続けられるか
まずは前年の確定申告書や社会保険料の資料を用意し、「個人事業のみ」と「個人事業+法人」の2つを数字で比較してみましょう。
自分だけで計算することが難しい場合は、法人を設立する前に税理士へシミュレーションを依頼すると、設立後の後悔を減らしやすくなります。
投稿者プロフィール

- 税理士/南九州税理士会 139642
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熊本生まれ 熊本育ち
税理士の木下博昭です。税理士業界歴21年!
節税や補助金、創業融資などを利用して、会社にお金を残す!
これに特化した経営支援を行いたいと思い独立を決意。
令和元年、令和のスタートともに独立しました。
もちろん、税制を活用した節税も行います。
農業コンサルタント向けに税制改正や節税の講演も実施しています。
何かご相談があればお気軽にどうぞ!
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