
「サラリーマンのまま個人事業主になれば、給与にかかる税金も安くなるのでは」と考えていませんか。SNSやショート動画では、「開業届を出せば経費を使える」「副業の赤字を給与と相殺できる」といった情報を見かけることもあるでしょう。
結論からいうと、個人事業主になること自体に節税効果はありません。開業届を提出しただけで給与にかかる税金が下がったり、支払ったお金がすべて経費になったりするわけではないためです。
実際の税額は、副業の事業実態、売上と必要経費、事業所得・雑所得の区分、青色申告などの適用要件によって変わります。副業が事業所得に該当すれば、赤字を給与所得などと損益通算できる場合があります。しかし、雑所得に該当すれば、雑所得の赤字と給与所得は相殺できません。
また、税金を減らすために不要な支出を増やせば、節税できる金額以上に手元のお金が減ります。「個人事業主になれば得をする」と考えるのではなく、副業を継続して利益を出せるか、そのうえで利用できる制度があるかを確認することが大切です。
この記事では、会社員のまま個人事業を始めるメリットとデメリット、給与と副業がある場合の税金・確定申告、開業前後に必要な準備について解説します。
サラリーマン・個人事業主の節税に関するよくある質問
Q. 開業届を出すと、給与にかかる税金も安くなりますか?
A. 開業届を提出しただけでは、給与にかかる税金は安くなりません。
税額への影響は、副業が事業所得と雑所得のどちらに該当するか、副業の利益または損失がいくらか、青色申告などの要件を満たすかによって変わります。
Q. サラリーマンのまま個人事業主になって損することはありますか?
A. 節税だけを目的に支出を増やすと、手元資金が減り、結果として損をする可能性があります。
例えば、事業で50万円の赤字が生じ、その全額を給与所得などと損益通算できたとしても、税金が50万円減るわけではありません。税負担の減少額は、損益通算した金額に所得税・住民税の税率を反映した一部にとどまります。一方、事業から流出した50万円は戻ってこないため、節税よりも利益を出すことを優先する必要があります。
Q. 副業を始める前でも税理士に相談できますか?
A. 相談できます。
相談に必要な売上額や利益額の基準はありません。副業が事業所得と雑所得のどちらに該当しそうか、開業届や青色申告承認申請書を提出すべきか、確定申告が必要になりそうかを確認したい段階でも相談できます。
木下博昭税理士事務所では、会社員の副業から個人事業、会社設立、創業融資まで対応しています。平日夜間や土日、Zoomでの相談も可能です。
- 1. サラリーマン・個人事業主の節税に関するよくある質問
- 1.1. Q. 開業届を出すと、給与にかかる税金も安くなりますか?
- 1.2. Q. サラリーマンのまま個人事業主になって損することはありますか?
- 1.3. Q. 副業を始める前でも税理士に相談できますか?
- 2. サラリーマンが個人事業主になっても必ず節税できるわけではない
- 2.1. 開業届を出すだけでは給与の税金は下がらない
- 2.2. 副業が事業所得か雑所得かで使える制度が変わる
- 3. 会社員のまま個人事業主になると税金はどうなる?
- 3.1. 給与と副業の所得を合わせて所得税を計算する
- 3.2. 「副業所得が20万円以下なら何もしなくてよい」とは限らない
- 3.3. 赤字を作るための支出は節税にならない
- 4. 会社員のまま個人事業主になる3つのメリットと主なデメリット
- 4.1. 安定した収入を得ながら事業に挑戦できる
- 4.2. 副業収入を得るために必要な支出を所得計算に反映できる
- 4.3. 要件を満たせば青色申告特別控除を使える
- 4.3.1. 2027年分から青色申告特別控除の要件が変わる
- 4.4. 本業との両立や記帳・確定申告の負担が増える
- 5. 会社員兼個人事業主は最強?どの働き方が得か5項目で比べる
- 6. サラリーマンが個人事業主になるには何をする?
- 6.1. 開業前に事業内容・収益計画・就業規則を確認する
- 6.2. 開業時に口座・帳簿・開業届・青色申告を準備する
- 6.3. 開業後は毎月記帳し、確定申告と納税資金を準備する
- 7. 会社員が個人事業主になると副業が会社にバレる?
- 7.1. 住民税の納付方法で知られる可能性がある
- 7.2. 住民税以外から知られる場合もある
- 8. 個人事業主になるべきか迷ったときの判断基準
- 9. まとめ
サラリーマンが個人事業主になっても必ず節税できるわけではない
会社員のまま個人事業を始めることはできます。ただし、税法上は「個人事業主」という肩書ではなく、実際にどのような活動を行い、いくらの収入と必要経費があり、その所得がどの区分に該当するかによって税額を計算します。
したがって、開業届を出すことと節税できることは分けて考えなければなりません。
開業届を出すだけでは給与の税金は下がらない
開業届は、個人が事業を始めたことを税務署へ知らせるための書類です。所得控除や税額控除を受けるための書類ではないため、提出しただけで給与にかかる所得税や住民税が下がることはありません。
給与については、勤務先が給与所得控除や所得控除などを反映して年末調整を行います。一方、副業は収入から必要経費を差し引いて事業所得または雑所得などを計算します。
副業が事業所得に該当し、必要経費を差し引いた結果が赤字になった場合は、その赤字を給与所得などと損益通算できる可能性があります。ただし、給与所得そのものが減るわけではなく、所得税・住民税を計算する際の合計所得が減る仕組みです。
また、雑所得の赤字は給与所得と損益通算できません。開業届を出して赤字を計上すれば必ず税金が還付される、というものではない点に注意しましょう。
参考:国税庁「損益通算」
副業が事業所得か雑所得かで使える制度が変わる
副業だから一律に雑所得になるわけではありません。一方、開業届を提出したからといって、自動的に事業所得になるわけでもありません。
事業所得に該当するかどうかは、その活動が社会通念上「事業」といえる程度で行われているかによって判断されます。主な確認項目は次のとおりです。
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 営利性 | 利益を得る目的で行い、利益を出すための取組をしているか |
| 継続性・反復性 | 単発ではなく、継続して受注・販売しているか |
| 独立性 | 自分の判断と責任で顧客と取引しているか |
| 規模 | 収入、取引件数、設備、投入時間などが事業と呼べる程度か |
| 記帳・保存 | 売上や経費を記帳し、請求書・領収書などを保存しているか |
事業所得に該当すれば、要件を満たすことで青色申告特別控除や純損失の繰越しを利用でき、赤字を給与所得などと損益通算できる場合があります。一方、業務に係る雑所得でも収入を得るために必要な支出は必要経費になりますが、青色申告特別控除や給与所得との損益通算は利用できません。
所得区分を誤ると、後から税務署に赤字の損益通算や青色申告の適用を否認される可能性があります。判断に迷う場合は、届出や申告をする前に税理士へ確認しておくと安心です。
参考:国税庁「法第35条《雑所得》関係」
会社員のまま個人事業主になると税金はどうなる?
会社員の給与と個人事業の所得を別々の人物の所得として納税するわけではありません。確定申告が必要な場合は、年末調整済みの給与を含めて所得税を計算します。
給与と副業の所得を合わせて所得税を計算する
給与は、原則として勤務先が年末調整を行います。副業については、その年の収入から必要経費を差し引き、事業所得または雑所得などを計算します。
確定申告が必要な場合の主な流れは次のとおりです。
- 勤務先から源泉徴収票を受け取る
- 副業の収入と必要経費から所得を計算する
- 給与所得と副業の所得、各種所得控除を確定申告書に記載する
- 年間の所得税額と、すでに源泉徴収された税額との差額を精算する
副業の確定申告が必要かどうかは、原則として売上ではなく、収入から必要経費を差し引いた所得で判断します。申告時には源泉徴収票の内容に加え、副業の帳簿、請求書、領収書、控除証明書などが必要です。
参考:国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」
「副業所得が20万円以下なら何もしなくてよい」とは限らない
年末調整済みの給与を1か所から受け、給与収入が2,000万円以下であるなど一定の要件を満たす会社員は、給与・退職所得以外の所得の合計額が20万円以下であれば、所得税の確定申告が不要になる場合があります。
20万円は売上ではありません。副業収入から必要経費を差し引いた所得で判断します。ただし、次の点に注意が必要です。
- 医療費控除や寄附金控除などのために所得税の確定申告をする場合は、20万円以下の副業所得も申告する
- 所得税の確定申告をしない場合でも、原則として住民税の申告が必要になる
- 所得税の確定申告をした場合は、住民税の申告を別に行う必要はない
- インボイス発行事業者など消費税の申告義務がある場合は、所得税の20万円基準とは別に消費税申告が必要になる
住民税の申告方法は自治体によって異なるため、住所地の市区町村へ確認しましょう。インボイス発行事業者として登録すると、売上が1,000万円以下でも消費税の申告が必要になります。
消費税の納税義務の判定などについては、以下の記事で詳しく解説しています。
参考:国税庁「確定申告(インボイス)」
赤字を作るための支出は節税にならない
事業所得の赤字を損益通算できる場合でも、支出した金額がそのまま税金から差し引かれるわけではありません。
例えば、事業に必要なものへ50万円を使い、結果として事業所得が50万円減ったとします。所得税と住民税の負担が一部減る可能性はありますが、手元からは50万円が出ていきます。税負担の減少額より支出額の方が大きいため、資金は減ります。
節税は、利益を残したうえで適用できる控除や制度を利用することが基本です。税金を減らすために赤字を作るのではなく、事業に必要な投資か、売上や業務効率の向上につながる支出かを先に判断しましょう。
過度な節税に対する注意点については、以下の記事で詳しく解説しています。
会社員のまま個人事業主になる3つのメリットと主なデメリット
会社員のまま個人事業を始める主なメリットは、給与の安定を保ちながら事業を試せることです。税制上のメリットは、開業届を出せば一律に受けられるものではなく、事業所得に該当し、青色申告などの要件を満たした場合に利用できます。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・給与を得ながら事業に挑戦できる ・副業の収支を把握しやすくなる ・要件を満たせば青色申告を利用できる | ・本業と副業を両立する時間が必要になる ・記帳や請求、確定申告の負担が増える ・所得区分や経費を誤ると税務上の問題が生じる |
安定した収入を得ながら事業に挑戦できる
会社を辞めずに個人事業を始める最大のメリットは、給与収入を確保しながら事業性を確かめられることです。
将来独立したい場合でも、商品やサービスが継続して売れるか、必要な利益を確保できるかを退職前に試せます。給与という収入源があれば、生活費を得るために無理な値下げや条件の悪い仕事を受けるリスクも抑えやすくなります。
ただし、副業を始める前に勤務先の就業規則、副業届の有無などを確認しましょう。本業の顧客情報や設備、勤務時間を副業に利用してはいけません。
副業収入を得るために必要な支出を所得計算に反映できる
必要経費になるかどうかは、個人事業主という名称や開業届の提出ではなく、その支出が副業収入を得るために必要だったかで判断します。
必要経費になり得る主な支出は次のとおりです。
- 事業用のパソコンや周辺機器
- 商品や材料の仕入代金
- 広告費やWebサイトの運営費
- 取引先との業務上必要な飲食代
- 税理士など専門家への報酬
- 会計ソフトや生成AIなどの利用料
- 業務に必要な書籍や研修費
家賃、電気代、通信費のように私生活と共通する支出は、全額ではなく事業で使用した部分だけが必要経費になります。使用時間、面積、通信量などの合理的な基準で家事按分し、計算根拠を残しましょう。
また、1台10万円以上のパソコンなどは、その年に全額を必要経費にできず、減価償却が必要になる場合があります。青色申告者向けの少額減価償却資産の特例などを利用できる場合もあるため、購入前に処理方法を確認しておくと安心です。
「個人事業主になったから経費が使える」のではなく、実際の業務との関係に基づいて所得を計算する点が重要です。
参考:国税庁「必要経費の知識」
要件を満たせば青色申告特別控除を使える
副業が事業所得に該当し、青色申告の承認を受けて要件を満たせば、青色申告特別控除を利用できます。青色申告特別控除は、対象となる所得から一定額を差し引けるため、控除を受けるためだけに支出を増やす必要がありません。
2026年分までの主な控除額と要件は次のとおりです。
| 控除額 | 主な要件 |
|---|---|
| 65万円 | 55万円控除の要件を満たし、e-Taxで期限内に申告するか、一定の優良な電子帳簿を保存する |
| 55万円 | 事業所得または事業的規模の不動産所得がある複式簿記で記帳し、貸借対照表・損益計算書を添付して期限内に申告する |
| 10万円 | 65万円・55万円控除の要件を満たさない青色申告者など |
一般的な会計ソフトは複式簿記による記帳を支援してくれますが、会計ソフトを契約しただけで控除を受けられるわけではありません。正しく記帳し、必要書類を作成して期限内に申告する必要があります。
青色申告承認申請書の提出期限は、原則として青色申告を始めたい年の3月15日までです。その年の1月16日以後に開業した場合は、開業日から2か月以内に提出します。開業届を出しただけで自動的に青色申告になるわけではないため、別途申請が必要です。
参考:国税庁「青色申告制度」
参考:国税庁「所得税の青色申告承認申請手続」
2027年分から青色申告特別控除の要件が変わる
2027年分以後は、青色申告特別控除の控除額と要件が変わります。
| 主な記帳・申告方法 | 2026年分まで | 2027年分以後 |
|---|---|---|
| 複式簿記・期限内e-Taxに加え、優良な電子帳簿保存またはデジタルシームレス保存 | 65万円 | 75万円 |
| 複式簿記・期限内e-Tax | 65万円 | 65万円 |
| 複式簿記・書面申告 | 55万円 | 10万円 |
| 簡易な記帳で、2年前の事業所得・不動産所得に係る収入金額が1,000万円以下 | 10万円 | 10万円 |
| 簡易な記帳で、2年前の事業所得・不動産所得に係る収入金額が1,000万円超 | 10万円 | 適用なし |
2027年分以後、複式簿記で記帳して10万円を超える控除を受けるには、期限内のe-Tax申告が必要です。75万円控除を受けるには、65万円控除の要件に加えて、優良な電子帳簿の保存またはデジタルシームレス保存の要件を満たす必要があります。
参考:国税庁「75万円の青色申告特別控除」
参考:国税庁「簡易簿記による10万円の青色申告特別控除を適用している皆様へ」
本業との両立や記帳・確定申告の負担が増える
会社員兼個人事業主になると、商品やサービスを提供する仕事だけでなく、営業、契約、請求、入金確認、記帳、確定申告なども自分で行う必要があります。
副業に時間を使いすぎて本業に支障が出れば、給与の安定を保ちながら事業を試せるメリットが失われかねません。売上だけでなく、副業に使っている時間や事務負担も確認しましょう。
事業用の口座やカードを分け、会計ソフトと連携し、毎月記帳する仕組みを作っておくと、確定申告前に作業が集中しにくくなります。それでも負担が重い場合は、記帳代行や確定申告の依頼も検討しましょう。
会社員兼個人事業主は最強?どの働き方が得か5項目で比べる
給与を得ながら事業を行う働き方には、収入源を分散し、独立前に事業を試せる強みがあります。ただし、時間や事務負担も増えるため、「会社員兼個人事業主が最強」と一律にはいえません。
| 項目 | 会社員のみ | 個人事業主のみ | 会社員兼個人事業主 |
|---|---|---|---|
| 収入の安定性 | 給与があり安定しやすい | 事業の状況に左右される | 給与を得ながら事業収入を増やせる |
| 税金の手続き | 年末調整で完結する場合が多い | 原則として確定申告が必要 | 年末調整後、必要に応じて給与と副業を確定申告する |
| 記帳・事務負担 | 副業がなければほぼ生じない | 売上・経費の記帳が必要 | 本業に加えて副業の記帳が必要 |
| 使える時間 | 本業や私生活に時間を使いやすい | 事業に時間を集中できる | 勤務時間外に事業時間を確保する必要がある |
| 独立への準備 | 退職後に事業を試すことになる | すでに独立している | 退職前に収益性や継続性を確認できる |
どの働き方が得かは、税金だけで決まりません。生活費、事業の利益、使える時間、独立時期、社会保険、法人の維持費などを含めて判断する必要があります。
サラリーマンが個人事業主になるには何をする?
個人事業を始めるときは、開業届を提出するだけではありません。事業計画、勤務先の規則、帳簿、申告、納税資金まで考える必要があります。
開業前に事業内容・収益計画・就業規則を確認する
開業前は、次の項目を確認しましょう。
- 顧客と、提供する商品・サービスが決まっているか
- 販売価格と売上見込みを決めているか
- 仕入れやシステム利用料などの必要経費を見積もっているか
- 副業に使える時間を確保できるか
- 勤務先の就業規則などのルールを確認したか
- 節税以外にも個人事業を始める目的があるか
勤務先が副業を禁止または許可制にしている場合、住民税の納付方法だけを工夫して内緒で始めるのは危険です。まず社内ルールを確認し、必要な手続きを行いましょう。
開業時に口座・帳簿・開業届・青色申告を準備する
事業を始めるときは、次の準備を進めます。
- 事業専用の口座やクレジットカードを用意する
- 手書きまたは会計ソフトなど、記帳方法を決める
- 売上の請求・入金方法を決める
- 開業届の提出期限を確認する
- 青色申告を希望する場合は、承認申請書を期限内に提出する
- 必要に応じてインボイス登録の要否を検討する
開業届の提出期限は、開業した年分の所得税の確定申告期限までです。一方、青色申告承認申請書は原則として3月15日まで、その年の1月16日以後に開業した場合は開業日から2か月以内です。
開業届と青色申告承認申請書は別の書類であり、提出期限も異なります。青色申告を利用したい場合は、開業届の期限まで待たずに申請準備を進めましょう。
参考:国税庁「新たに事業を始めたときの届出など」
開業後は毎月記帳し、確定申告と納税資金を準備する
開業後は、少なくとも毎月次の項目を確認しましょう。
- 売上と必要経費を記帳しているか
- 請求漏れや入金遅れがないか
- 利益と預金残高を確認しているか
- 領収書、請求書、契約書などを保存しているか
- 所得税・住民税・消費税などの納税資金を分けているか
利益と預金残高は同じではありません。売上が増えていても、入金前であったり、設備購入や借入返済で預金が減っていたりする場合があります。税金の支払いで資金が足りなくならないよう、生活費とは別に納税資金を確保してください。
確定申告前には、源泉徴収票、副業の帳簿・証憑、所得控除に関する資料を準備し、青色申告決算書または収支内訳書と確定申告書を作成します。
会社員が個人事業主になると副業が会社にバレる?
税務署へ提出した開業届が、勤務先へ自動的に送られることはありません。そのため、開業届を提出したことだけを理由に、副業が勤務先へ伝わるわけではありません。
ただし、会社に絶対に知られなくなるわけではありません。住民税のほか、SNS、同僚、取引先、勤務時間中の活動などから知られる可能性があります。
住民税の納付方法で知られる可能性がある
給与から住民税を天引きする方法を特別徴収、自分で納付する方法を普通徴収といいます。熊本市では、給与・公的年金以外の所得がある人は、その所得にかかる住民税について普通徴収を選択することが可能です。
ただし、自治体や所得の種類によって取扱いが異なる場合があります。また、普通徴収を選べば勤務先に絶対知られないと保証されるわけではありません。普通徴収が選択できるかは、申告前に住所地の自治体へ確認しましょう。
参考:熊本市「個人市民税・県民税(住民税)の納税方法について」
住民税以外から知られる場合もある
住民税以外で、副業が勤務先に知られる主なきっかけは次のとおりです。
- 実名や顔写真を使ってSNSやWebサイトで発信する
- 同僚へ副業の内容や収入を話す
- 勤務先の顧客や取引先と副業で接触する
- 勤務時間中に副業の連絡や作業をする
- 本業のパソコン、メールアドレス、情報を副業に使う
個人事業を行うだけで、事業の利益が勤務先の社会保険料の計算へ直接加算されるわけではありません。ただし、副業先から給与や役員報酬を受け、複数の社会保険適用事業所で加入要件を満たす場合は別の手続きが必要です。
税金の手続きだけで隠そうとせず、勤務先のルールを守り、本業と副業の情報・時間・設備を明確に分けることが大切です。
個人事業主になるべきか迷ったときの判断基準
個人事業主になるかどうかは、節税額ではなく、事業を継続して利益を得られる見込みがあるかを中心に判断しましょう。
| 現在の状況・目的 | 判断の方向性 |
|---|---|
| 節税だけが目的で、顧客や売上計画がない | 開業を急がず、給与所得者が利用できる所得控除などを確認する |
| 単発の副業収入がある | 収入と必要経費を記録し、所得区分と申告の要否を確認する |
| 継続して受注し、帳簿も付けられる | 開業届と青色申告を検討する |
| 本業との両立が難しくなっている | 価格の見直し、業務の外注化、受注量の調整を検討する |
| 副業利益が安定し、将来独立したい | 退職時期、生活資金、税金、社会保険を試算する |
| 利益を事業に残して拡大したい | 個人事業と会社設立を比較する |
| 勤務先が副業を禁止・許可制にしている | 税金の対策より先に就業規則と社内手続きを確認する |
個人事業と会社設立のどちらが有利かは、税率だけでは決まりません。法人には赤字でも発生する税金や、申告・登記・社会保険などの維持負担があります。一方、利益が安定し、従業員の採用や融資、取引先からの信用が必要になると、法人が適する場合もあります。
副業を法人化するタイミングについては、以下の記事で詳しく解説しています。
まとめ
サラリーマンのまま個人事業主になることはできます。しかし、個人事業主という名称や開業届の提出そのものに、税金を下げる効果はありません。
開業を検討するときは、以下を確認しましょう。
- 顧客と、提供する商品・サービスがあるか
- 仕入れやシステム利用料などの必要経費を見積もっているか
- 副業に使える時間を確保できるか
- 勤務先の就業規則などのルールを確認したか
- 節税以外にも個人事業を始める目的があるか
投稿者プロフィール

- 税理士/南九州税理士会 139642
-
熊本生まれ 熊本育ち
税理士の木下博昭です。税理士業界歴21年!
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これに特化した経営支援を行いたいと思い独立を決意。
令和元年、令和のスタートともに独立しました。
もちろん、税制を活用した節税も行います。
農業コンサルタント向けに税制改正や節税の講演も実施しています。
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